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元記者ピロシの醤油屋今日談

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海千山千の輸出に挑む。でも、ハードルは高いぞ 醤油屋今日談(21)

2018年10月19日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 商談中の私(右から2人目)。机の下で相手の足を蹴らないように気をつけながら話を聞いてます

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 先日、千葉・幕張で開かれた「日本の食品 輸出EXPO」という催事に参加してきた。

 その名の通り、食品の輸出に向けたPRをする催事だが、輸出の可能性と大変さを同時に肌で感じるいい機会になった。今回は、この濃密な3日間を振り返りたい。

 この催事の特徴は、80カ国・地域から約4000人が来場し、座っての商談ができる点だ。輸出の商談会としてはかなり規模が大きい。今回が2回目で、政府が農産物・食品の輸出額1兆円を目標に掲げ、力を入れていることから始まったようだ。

 ちなみに、2017年の日本の農産物・食品輸出額は8071億円で、5年前の約1.5倍。日本食が海外で評価されていることもあり、わが社も英語のパンフレットくらいは用意をしているが、売上全体に占める割合はまだまだ小さいのが現状。追い風にあやかりたいところなのだ。

 ただ、これまでの催事は立ち話での接客が常。今回は膝を交えてじっくり。しかも、相手は外国人バイヤー。通訳の助けを借りるとはいえ、不安を抱えつつ会場に向かった。

 会場は、大手から中小まで約600社が出展し、にぎわっていた。わが社は、コストの面から、お誘いいただいた貿易コンサル会社や食品メーカー3社と共同で出展した。ある大手飲料メーカーは10区間を1社で借りて、さらに茶室まで設けていたが、わがブースは足の踏み場もないくらい手狭だった。

 商談は、事前にネット上で出展者と来場者がやりとりをして、時間を決める仕組み。コンサル会社のご尽力で、連日、5、6組のバイヤーとの商談が前もって決まっていて、スケジュールはほぼびっしりだった。

 ところが、である。開会直後の1組目から、予定していたフィリピンのお客様が時間を過ぎても来ない。30分ほど待っていると、今度は、その日の午後に予定していた台湾のお客さまが「予定が変わった。今からいいか」と訪ねてきた。

 想定は早くも崩壊。英語や中国語での慣れない商談を、次のアポまでの時間を気にしながらこなすことになり、冷や汗が止まらない。おそらく、かなりぎこちない表情になっていたはずだ。

 救われたのは、何度か手応えが感じられる商談があったことだ。

 ドイツ人の初老のバイヤーは「うん、このまろやかな味をシェフも気に入るはずだ」とサンプルを試食し、原材料や製造法を熱心に尋ねてきた。和食や発酵の知識も豊富なので「どうしてそんなに詳しいのか」と逆質問すると、「日本の食材をミシュランの星付きレストランで使ってもらうには、私が料理を作ってシェフたちに提案しないといけないからね。それに私は『ウマミ ジャンキー』なのです」とオチまで付いた答えが返ってきた。励みにならないはずがない。
 
 フィリピンのバイヤーは、ポン酢をいたく気に入ってもらえ、2度もブースに来てくれた。

 一方、台湾のバイヤーには、通訳が全く入れないマシンガントークで30分間打ちのめされ、UAEのバイヤーからは「醤油はいらないけど醤油を入れる魚型の容器(弁当用の小型容器)がほしい」と変化球で攻められた。

 ダメ押しには、中国のネット通販運営会社の若い女性部長様からの中国国内のネット通販への出品の売り込み。「そもそも、ネットを使えば世界中のお客とコンタクトが取れるので、こんな展示会に出る必要もないでしょ?」と同意を求められ、「ネット通販は便利だけど、そこまでは思わない」と返すと、「私はこの会場で20件くらい契約を取っているのに、なんであなたは私の話が分からないの」と蔑まれたりもした。

 世界にはいろんな国があり、いろんな人がいて、実に多様性にあふれているんだなぁと実感した3日間。本題の商談の成約こそなかったが、これから細部を詰め、うまくいけば輸出につながりそうな相手も見つかった。

 催事後、メールで連絡を取っているが、それだけでもなかなかの作業量。成約までつながるには、料金や包装方法、通関の手続き、規制の確認など、さらに膨大な手間がかかる。実際には、貿易会社に間に入ってもらうとはいえ、一筋縄ではいかないと考えておいた方がいいということは、今回の催事でよく分かった。

 3日間で18件の商談をこなし、11カ国・地域のお客様とお会いした。実りの秋がさらに深まり「収穫の秋」になるよう、アフターフォローを頑張りたい。










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