ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

【あなたの特命取材班】弁護士名義貸し横行 経営の苦しさ背景か

2018年10月27日 03時00分 更新

記者:久知邦


  • 弁護士名で男性に届いた文書には「事務員が交渉を行った事実は一切ない」「なぜ虚偽の主張をするのか理解に苦しむ」などと書かれていたが、録音データの内容とは反していた

 福岡市内にある法律事務所の男性事務員が、弁護士法で禁じられている法律事務、いわゆる「非弁活動」をした疑いがあることが特命取材班への情報提供で分かった。被害を訴える30代男性はこの事務所の弁護士を懲戒請求するとしており、福岡県弁護士会も調査に乗り出す方針だ。非弁活動が後を絶たない背景には何があるのか。

 被害男性は別居中の妻らから不倫による慰謝料を請求されている。

 非弁活動が疑われる会話があったのは7月24日の電話だった。「(慰謝料を)払う意思がないなら時間を取るつもりはない」「裁判したい」。電話の主は弁護士事務所名だけを告げ、いきなりこう迫ってきたという。男性は文面でのやりとりを求めたが「文面なら訴訟が一番」と全く取り合ってもらえなかった。

 後日、電話の主の正体について、妻が依頼した弁護士とは別人の事務員だったと知り、男性は事務所側に手紙で抗議。9月に弁護士名で(1)事務員が交渉を行った事実はない(2)事務員は弁護士が依頼を受任したことを伝えた(3)男性が慰謝料を支払う気がないと告げて電話を終えた−との回答があった。

 しかし男性は事務員とのやりとりを録音していた。本紙の取材に弁護士は当初「事務員が交渉したとか、訳の分からないことを言われ迷惑している」と答えたが、録音データの存在を告げると「信じられない。これ以上関わりたくない」と一方的に電話を切った。

      ■

 弁護士法は弁護士以外が法律事務を行うことを禁じている。事務員が定型化した書面の作成や事務連絡を代行することはあるが、あくまで弁護士の指導、管理下にあることが条件。非弁活動の問題に詳しい第一東京弁護士会の増田嘉一郎弁護士は、法的判断を伴う直接交渉は「論外」だと指摘する。

 事務員の非弁活動で弁護士が処分されるケースは一向になくならない。神奈川県弁護士会は昨年末、事務員に法律事務を担わせる「非弁提携」をした弁護士法人を、福岡県弁護士会も2月、同様の非弁提携をした男性弁護士を、いずれも業務停止1年の懲戒処分とした。9月には、事務員数人に弁護士の名義を貸したとして、大阪地検特捜部が弁護士法違反容疑で大阪市の弁護士事務所を家宅捜索した。

 非弁提携の主な事例としては、報酬をもらう見返りに弁護士の名義を貸し、整理屋が債務整理業を行うケースなどが挙げられる。こうした違法行為が後を絶たない背景には、司法制度改革に伴い、弁護士の増加による経営の行き詰まりがあるとの指摘もある。

 法務省によると、2017年の弁護士数は約3万9千人で、20年前の2・3倍に増加。一方、弁護士白書によると、仕事を始めて5年未満の弁護士の平均年収は06年は1613万円だったが、14年は796万円に減少。15年に弁護士1年目だった人のうち年収400万円未満だった割合は16%に上るという調査もある。

 日本弁護士連合会によると、非弁提携を含む懲戒処分件数は1997年の38件から、2017年は106件まで増加。ある県の弁護士会幹部は「経営の苦しさから名義貸しなどの甘い話に乗りやすい背景は確かにあるが、問題を起こさない弁護士の方が多い。厳正に対処し、倫理研修などで啓発していくしかない」と話した。










特集 qレポートの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事