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「厚底vs薄底」開発競“走” マラソンシューズ、新製品続々

2018年11月21日 15時00分 更新

記者:伊藤瀬里加


  • ニューバランスの新作「NB HANZO V2」発表会に出席した三村氏(左)と神野選手

  • シカゴ・マラソンで日本記録を出した大迫選手。ナイキズームヴェイパーフライ4%フライニットを履いていた(ナイキジャパン提供)

 男子マラソン日本記録保持者の大迫傑選手(ナイキ)の足元に注目が集まっている。記録を打ち立てた10月のシカゴ・マラソンで着用したシューズは、かかとの部分が高いナイキ社製の「厚底靴」。今年2月の東京で16年ぶりに日本記録を更新した設楽悠太選手(ホンダ)も履いていた。この“厚底ブーム”に待ったをかけたのが数々の名ランナーの靴を手掛けたシューズ職人、三村仁司氏(70)だ。ニューバランス社と提携し、これまで作ってきた「薄底靴」に進化を加えた新商品を発表した。東京五輪を前に、各社が技術開発でしのぎを削る「シューズ競走」はデッドヒートを繰り広げている。

 16日に都内で行われた記者発表会で壇上の三村氏が胸を張った。「今までにない履き心地。足は第2の心臓で選手にとって練習しやすい、結果を出せる靴を開発したいとやってきた」

 三村氏は女子マラソン五輪金メダリストの高橋尚子選手や野口みずき選手、野球界でも米大リーグのイチロー選手のスパイクを手掛けた靴作りの名工。「足首の硬い人はクッションがある方(厚底)が走りやすい。ただ、日本人は僕が知る限り、10人のうち8人くらいは足首が軟らかい」というのが三村氏の考えだ。

 これまで主にトップアスリートの靴を手掛けてきた三村氏がニューバランス社と共同開発して一般市場でも来月に発売する「NB HANZO V2」は、シカゴで大迫選手が履いていたナイキ社の最新作「ズームヴェイパーフライ4% フライニット」と比べ、かかとの厚さが約半分の1・4センチしかない。前のモデルは反発性素材とクッション性素材の2層構造だったが、1枚仕立てに改良した。

 三村氏が蓄積した膨大なデータを基に靴型を作り、足を覆う部分の素材も福井の町工場に製造を依頼するなどこだわったという。会見には青山学院大時代に箱根駅伝で活躍し「山の神」と称せられた神野大地選手(東京陸協)が出席。「フィット感があって、繊細(な作り)」と、このシューズで来月2日の福岡国際マラソンに挑むことを明かした。

 一方、日本人初の2時間5分台を樹立した大迫選手が履いていたのは、これまでの常識を覆すシューズだった。年々、軽量化を求めて薄くなってきた靴底が、かかと部分で約3センチになるほど厚いのが最大の特徴。独特の靴底は曲線状で反発力のあるカーボンプレートを柔らかい素材で挟んである。最初は驚いたという大迫選手も「薄い靴だと疲労が残ってしまう部分があるが、それが軽減される」と好感触を口にしている。

 シカゴでは2時間5分50秒で3位に入った大迫選手だけではなく上位5人がナイキ社の最新作を着用。9月のベルリン・マラソンで2時間1分39秒の世界記録を出したキプチョゲ選手(ケニア)も愛用し、2月の東京マラソンで日本記録を16年ぶりに更新する2時間6分11秒で2位に入った設楽選手は、この一つ前のモデルだった。箱根駅伝の強豪校など、採用する選手やチームが増え、市民ランナーの人気も高まっている。

 福岡市中央区のステップスポーツ福岡店では9月に約50足を抽選で販売すると、約70人の応募があった。今月に入って再入荷しても、約60足が当日のうちに完売した。島添正平店長(39)は「世界記録、日本記録が続けて出たこともあって注目度は高い。私やスタッフが知る以上のことを聞いてくる方もいる」と、うれしい悲鳴を上げた。

 国内メーカーのミズノは、衝撃を吸収しながら足元の安定感と前への推進力を生み出す独自に開発した靴底を採用。2020年東京五輪を前にしたトップアスリートの要望や、ランニングブームもあって、シューズを巡る開発競争は激しさを増すばかりだ。厚いか、薄いか−。ランナーを支える“足元”にも注目だ。










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