ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

緊急雇用4割不適切 外国人への賃金支払い 国交省調査

2018年11月22日 03時00分 更新


  • 勤務先での外国人差別を訴えるペルーから来日した女性=21日午後、国会内

 2020年の東京五輪に向けた人手不足対策として建設業で緊急的に受け入れている外国人労働者に関し、国土交通省が17年度、雇用企業に立ち入り調査したところ「日本人と同等以上」と義務付けた給与水準を下回るなど賃金支払いに問題がある企業が4割に上ったことが21日、西日本新聞が入手した同省の内部資料で分かった。外国人の緊急雇用は、日本人と同等の給与水準を保証することや、技能実習生が移行する点で、衆院法務委員会で21日に審議入りした入管難民法改正案と共通点が多いが、外国人の労働環境を保護する制度の実効性に乏しい実態がうかがえる。

 外国人の緊急雇用は15年に受け入れを開始。いったん帰国して再来日した技能実習生に在留資格「特定活動」を付与する。企業側には労働関連法令の順守も義務付けている。雇用企業は国交省の認定が必要で、今年9月末時点で建設業では1473社に4011人が働いている。

 資料は、雇用企業が認定申請の際に提出した労働条件を守っているかどうかについて、業界団体に委託した調査をまとめた。それによると、立ち入った518社のうち204社で、給与が認定内容未満▽家賃などの過大な差し引き▽手当未払い−などがあり、同省が行政指導した。

 就労者名簿の作成が不十分(51件)▽過重な残業や休日労働(33件)▽預金通帳やパスポートを企業側が保管(2件)−など、現行の技能実習制度で指摘される問題点と同様の事例も見つかった。

 同省は調査結果について「企業を行政指導するための内部資料」(石井啓一国交相)としてこれまで公表していない。 (湯之前八州)

   ◇   ◇

急ぐ与党に批判噴出 調査誤り法相改めて「おわび」 入管法衆院委審議入り

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案は21日、衆院法務委員会で山下貴司法相が提案理由説明を行い、実質審議入りした。山下氏は失踪した外国人技能実習生を対象にした法務省の調査結果に誤りがあったことについて「心からおわびする」と述べた。安倍晋三首相は29日に外遊に出発する見通しで、自民党の二階俊博、公明党の斉藤鉄夫両幹事長は21日、都内で会談し、27日の衆院通過を目指す方針で一致した。野党側は反発を強めている。

 山下氏は法務委で「誤った資料をほぼそのまま読み上げる形で答弁し、結果として誤った答弁をした」と陳謝。技能実習制度を検証する法務省のプロジェクトチームで実態把握の在り方も検討する考えを示した。

 法務省の和田雅樹入国管理局長は新たな在留資格「特定技能1号」に移行する実習生の割合は、導入初年度は55〜59%を想定し、導入から5年目までの累計で「12万〜15万人で約45%」との見込みを示した。

 法務委の葉梨康弘委員長は定例日ではない22日午前に野党の質疑、午後に参考人と与党の質疑を実施する日程を職権で決めた。 (一瀬圭司)

   ◇   ◇

野党「統計、全く信用性ない」

 衆院法務委員会で21日に始まった入管難民法改正案の審議。今国会での成立に突き進む与党に対し、野党は失踪した外国人技能実習生を巡る法務省調査について突き上げた。今国会で最大の対決法案を巡る攻防は激しさを増した。

 「失踪動機については、『低賃金』67・2%、『実習終了後も稼働したい』17・8%、『指導が厳しい』12・6%、『労働時間が長い』7・1%、『暴力を受けた』4・9%などが正しい」。山下貴司法相は、山尾志桜里氏(立憲民主党)の質問に対して答弁を修正。「誤ったデータに基づくものを読み上げた。大変おわびしなくてはならない」と頭を下げた。

 7日の参院予算委員会で山下氏は「より高い賃金を求めて」が約87%、「実習終了後も稼働したい」が約14%、「厳しい指導」が約5%と答弁していた。

 調査自体の甘さも明らかになった。源馬謙太郎氏(国民民主党)は失踪動機を聞き取る方法について、「なぜ失踪したか聞き、該当すると思う項目をチェックするのか。賃金や労働時間など項目を全て挙げて選んでもらうのか」と確認。法務省の和田雅樹入国管理局長は「特段マニュアルを定めていない。個々の入国警備官のやり方で聞き取っている」と答弁した。

 聞き方によって回答が異なる調査内容に、源馬氏は「選択肢が示されなければ、外国人が『最低賃金以下の賃金だったから』などとは答えられないのではないか。統計の数自体、全く信用性がないものになる」と主張した。

 山下氏は、法務省のプロジェクトチームで技能実習生の実態把握の在り方を検討する考えを示したが、山井和則氏(国民)は「実態把握してから法案を作るのが当たり前だ」と訴え、後手後手の対応をとる政府を批判した。 (飯田崇雄)

   ◇   ◇

元技能実習生ら過酷な実態証言 国会で集会

 外国人労働者の雇用拡大を目指す入管難民法改正案が実質審議入りした21日、受け入れ態勢の充実を訴える集会が国会内であり、元技能実習生らが低賃金、長時間の過酷な勤務実態を証言した。

 2005年4月に中国から来日し、栃木県のイチゴ農家で働いた元実習生の男性(38)は、毎日午前5時〜午後9時の勤務。パスポートや預金通帳を取り上げられ、基本給の8万円から食費などを引かれた。「技術を学びたかったが、ただ働きのようなものだった。新しく日本に来る人が、本当に守られるのか疑問に思う」と言葉に力を込めた。

 1994年にペルーから来た女性(56)は自動車部品工場など十数カ所で勤務。外国人差別があり、きつい仕事や残業を押し付けられた。「仕事でけがをしても補償がない」と語った。

 集会は、外国人を支援するNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」が主催し、約200人が参加。永住につながる在留資格の創設や、日本人と同一の賃金、社会保障、教育を保障する体制整備を政府に求めるアピールを採択した。外国人労働者の問題に詳しい指宿昭一弁護士は「外国人は労働力ではなく、生身の人間だ」と強調した。 (湯之前八州)

   ◇   ◇

「国民的議論」呼ぶ討論を 西日本新聞「新 移民時代」取材班キャップ 坂本信博

 「会社をいじめられましたので、今は思い病気になりました。でもも直(す)ぐくびになるかもしれません」。誤字交じりのメッセージが先日、本紙「あなたの特命取材班」に無料通信アプリLINE(ライン)で届いた。長崎県内で暮らすベトナム人技能実習生の女性からのSOSだった。

 有休も取らせてくれず、労働基準監督署に相談したが、職員はベトナム語が話せず十分な対応が受けられなかったこと。通報が上司にばれて帰国を迫られていることも記されていた。

 急増する外国人労働者との共生をテーマに本紙が2年前から展開してきたキャンペーン報道「新 移民時代」の取材で、似たような話を幾度も耳にしてきた。

 日本で技能を身に付け帰国してもらう建前の陰で、低賃金の単純労働を強いる技能実習制度の現実。日本語習得より労働を目的とした出稼ぎ留学生の実態。キャンペーンで取り上げたのは、事実上の労働移民がいるのに、いないふりをして対策を放置してきた政府の「移民ネグレクト」が生んだひずみだった。

 21日、衆院法務委員会で実質審議入りした入管難民法改正案は、こうした流れに終止符を打てるのか。

 すでに120万人を超す外国人労働者が日本社会を支えている現実を直視し、「労働開国」を国会で論じる好機のはずだ。外国人労働者への社会保障や教育も含め、日本社会の在り方を変えることにつながる重大な問題だ。

 だが、安倍晋三首相は「いわゆる移民政策ではない」と繰り返すことで、骨太の議論を封じているように見える。人手不足が待ったなしであることは九州の現場を歩いた取材班の肌感覚と重なるが、来年4月施行を急ぐあまり制度設計は生煮え。会期末までの3週間足らずで十分な審議を尽くせるとは思えない。国会だけでなく、家庭や職場、学校、地域で国民が意見を交わす必要もある。

 政府は「移民政策」であることを正面から認める。与野党も、駆け引きではなく労働開国の在り方を論じる。今後50年、百年先の「国の在り方」を見据えた議論をすべき時だ。










全国経済 ニュースの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事