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障害者担う伝統産業 従業員半数占める「宇佐ランタン」 作業を分担し、やる気アップ

2018年12月06日 15時00分 更新


  • ちょうちんづくりに励む「宇佐ランタン」の従業員たち

  • 障害者雇用について話す「宇佐ランタン」の谷川忠洋会長

 大分県宇佐市の「宇佐ランタン」は、雨に強いビニール製ちょうちんの製造卸会社として知られる。従業員の半数は知的障害者。広告に使われるほか、祭りやコンサート会場でも人気の商品を作る上で欠かせない人材だ。中央省庁などでは障害者雇用の水増しが発覚したが、長く障害者に向き合ってきた谷川忠洋会長(80)は「わが社は彼らを中心に回っている。技術の重要な継承者でもある」と強調する。

会長「重要な技術継承者」

 型に巻いた針金にはけで接着剤を塗り、ビニールを貼り付ける。てきぱきと作業に当たる阿部幸美さん(53)は勤続34年のベテラン。しわが寄らないよう器用に指でのばし、多い時で1日120個のちょうちんを完成させる。そばで働く小林千夏さん(19)は今年、特別支援学校を卒業した新人。「仕事は楽しい」。小さな声でそう言い、恥ずかしそうにうつむく。従業員20人のうち知的障害者は10人。話をしていても手が休まることはない。

 「おいちゃん」と呼ばれる谷川会長は、兄が養子に入った名古屋市のちょうちん製造会社で働いた後、父親の病気をきっかけに宇佐市に帰郷。1973年に宇佐ランタンを創業した。

 障害者を初めて雇ったのは81年。大分県社会福祉事業団の依頼だった。「この子たちはいいものを持っているのに誰も気付かない。能力を引き出すのに加勢してくれないか」。職員の訴えに心を動かされた。会社の経営は軌道に乗ったばかりで、一緒に働く妻は「お父さん、無理よ」と渋ったが、知的障害がある男女5人を迎え入れた。

 自宅裏の倉庫2階を作業場にして仕事を教えたが、のみ込みには時間がかかる。衝突し、スコップを持って追いかけ回されたり、石を投げられたりもした。作業効率は下がり、経営は悪化。それでも「辞めてほしい」とは言い出せなかった。

 ある日、いつも駆け寄ってくる女性社員の足が1メートルほど手前で止まった。「おいちゃん、目が笑っていないから怖い」。頭を殴られたような衝撃を受けた。仕事を覚えてもらおうと思うあまり「上から目線」になっていたことを思い知った。

 それからは相手の気持ちを読み取ろうと努めた。すると、怒っても真剣に向き合う姿勢が伝わるようになった。一度に多くのことを覚えるのが苦手な一方、同じ作業の繰り返しは得意な人が多いことにも気付いた。

 一つの作業に集中しやすいよう、工程を「型に針金を巻く」「ビニールを貼る」「乾燥する」の三つに分け担当を割り振った。「多く作ろうという意識が芽生え業績も伸び始めた」と振り返る。

 これまで同社で働いた障害者は40人超。休憩時間に先輩が後輩に助言する姿もみられる。谷川会長は「今や立派な職人。知的障害者は数合わせではなく伝統産業の担い手であり、技術の継承者です」と力を込める。

 自分の手で生み出したちょうちんが街にともり、数万人が集まるライブ会場を彩る。その光景を目にした喜びが従業員のやりがいにつながる−。「私もうれしいを通り越して誇りに思う」と谷川会長。一人一人の真剣なまなざしを前に、顔をほころばせた。










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