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YouTubeと「さびれた街」の共通点

2018年12月16日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • YouTubeとシャッター街の共通点とは…

  • 福間慎一(ふくま・しんいち)
    福岡市生まれ、2001年入社。文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。1年間のヤフー出向を経て17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。

 「『人生の大半の時間を動画で台無しにすることができるね』なんて話してましたよ」

 福岡市・天神のアクロス福岡でイベントに登壇した、動画共有サービスYouTubeの共同創業者、チャド・ハーリー氏。創業当時を振り返る際に出たその言葉に、思わず「あ、あなたが “犯人”か…」と独りごちてしまった。

 というのも、わが家の下の子(4歳)、一通りいろいろ遊びを終えると、「見ていい?」と聞いてくる。YouTubeだ。

 もちろん「30分だけだぞ」などと決めて見せているが、その間は「人間ってこんなに集中することができるのか」というほど画面に見入る。時間が来たことを告げなければ、どこまでも見続ける勢い。まさに時間“泥棒”である。

 ハーリー氏が描いていたのは▽動画にコメントを付けられる▽関連する動画を表示する▽動画をウエブサイトに埋め込むことができる――といった機能。今でこそ当たり前のサービスだが、2005年のYouTube登場当時、こういうものはなかった。

 企業価値は1年半で8倍以上に。といっても実際の金額で言えば220億円が1850億円だ。ケタが違う。もちろん、誰もやっていなかったサービスを着想したということが一番大きいのは言うまでもない。だが、それを実現するために必要な要素がちゃんとあった。

 とても分かりやすかったので、自分なりに理解した部分を箇条書きする。

▽小さいチームで、小さく始める。チームが大きいと、コンセンサスを得にくい
▽外ではアイデアを盗まれることを恐れずに話す。するとサポートが得られる
▽最初のうちは、利益よりも「人」を増やすことを重視する
▽競合に入られないよう「この事業は大変だ」とホラを吹く
▽先々起こる問題のことは(あまり)考えない
▽自分の直感を信じる
▽成功には「運」も大事


★★  ★★  ★★

 世界でもまれに見る「成功者」の話を聞きながら思い出したのが、数日前に天神で昼食を一緒に食べた、事業家の木下斉さんの話だ。

 私より5歳年下だが、学生時代から全国の商店会に「でっち奉公」し、その後も熊本や女川(宮城県)など全国50都市以上で街おこしの現場にかかわってきた木下さん。「いや、もうひどいところは本当にひどいですよ」と言う。

 補助金を「麻薬」と断じ、全国の失敗事例を「墓標シリーズ」として有料コンテンツ化さえしてしまうその舌鋒は「狂犬」だとか「溺れる人に石を投げる」などとも言われる。その木下さんが見てきた、地域活性化の現場での悪例を思い出したのだ。これも列挙する。

▽マインドが暗く、物事を面白がらない
▽変化することで立場が危うくなると感じる人が、何か創ろうとする人を妨害する
▽「喜ばれるモノやサービスを作る」ことよりも、お金の出入りに執着する
▽「こんな懸念が」「ここが危ない」とリスクを見つけてばかりいる
▽必要のないものを無理やり作る
▽「誰も取り組まない」と愚痴を言い、その本人に当事者意識と覚悟がない
▽過去の成功体験に固執する


 多少のずれはあるが、見事にハーリー氏の言葉の「裏側」が表現されている。要は「新しいこと」と「再生すること」のプロセスは同じ。というか、再生することはもはや新しいことをやることだ。

 そういう意味では、「さびれた中心市街地」というのは、ベンチャー(冒険)の最前線なのかもしれない。

 さらに言えば、これは街に限った話ではない。今、私がいる新聞業界だって同じことだ。「さびれた」と書くと怒られそうだが、少なくとも紙の新聞の部数は今後も落ち続けるだろう。まだ人口は多くても、着実に衰退する中心市街地のようなものだ。ここでも、さきほど列挙した現象が見られる。「うんうん、うちも」という別業種の方もいるだろう。

 YouTubeのハーリー氏の言葉で印象に残ったことがもう一つある。「今でこそ、YouTubeの(成功の)ストーリーを語ることができるが、当時は自分でも何をやっているのかわからなかった」。

 先のことは分からない、だからとにかく信頼できる仲間と信じる方向へ一生懸命進め――。こう書くと実に平易な表現だが、やるのは簡単ではない。でも自分がいるところを元気にしたいのだったら、やるしかない。










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