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復活した「小さな恋のものがたり」に込められた思い 漫画完結から4年、新たなスタート

2018年12月22日 03時00分 更新

記者:川口安子


  • めったに表舞台で話すことのないみつはしちかこさん(左)の声に聴衆は熱心に聞き入っていた。隣は編集者の山崎園子さん=12月9日、東京都の町田市民文学館

  • この秋に刊行された「小さな恋のものがたり」の第44集。サリーと別れた後の「その後のチッチ」が描かれる

 叙情まんが「小さな恋のものがたり」は、半世紀にわたって女子高生のチッチと男子高生のサリーの初恋を描き、4年前に第43集で完結した。この秋、「その後のチッチ」を描いた第44集が刊行され、話題を呼んでいる。作者みつはしちかこさん(77)=東京都=とゆかりの深い東京都の町田市民文学館では「みつはしちかこ展」が開催された(12月24日に終了)。めったに表舞台に出ることがないみつはしさんの語りから、3代にわたって愛される秘密を探った。

北九州出身の編集者と二人三脚

 12月9日。町田市民文学館の会場はファンの熱気に満ちていた。みつはしさんと、その傍らで50年近く作品を支えてきた編集者、山崎園子さんの対談。ちなみに山崎さんは北九州市出身で小倉高の卒業生だ。

 「山崎さんはいつも締め切りになるとケーキを持ってきてくださって。さぁこれから頑張りましょーって」(みつはしさん)

 「小さな恋のものがたり」の始まりは、60年前にさかのぼる。

「時よ止まれ」17歳の初恋が生んだチッチとサリー

 音譜(♩)のような形の足で駆け回る小さなチッチと、背が高くてハンサムなサリー。物語は、みつはしさん自身の初恋がモデルになっている。

 「サリーっていうのは、私がずっと片思いしてた放送劇部の人なんですけど、学校のときは私が遠くから片思いしてるだけでデートとかしたことないんですよね」(みつはしさん)

 遠くから見つめるだけだった初恋は、卒業間際になって急展開。同人誌のメンバー同士となり、デートを重ねる仲になった。

 あるとき、「小さな恋のものがたり」のスケッチブックを渡して、読んでもらった。彼は「この物語は絶対面白いから、売り込んだらきっと採ってくれる」と太鼓判を押してくれた。

 「『みつはしさんの漫画はチャーリー・チャプリンのユーモアとペーソス(哀愁)に通じてると思う』って励ましてくださった。そういう、ちょっとロマンチックな感じでチッチを描いていこうと思いました」。みつはしさんは振り返る。

 チッチが17歳のままの設定にしたのも、この初恋の影響が大きかったという。

 「初めてデートしたときに、『この時が止まればいい』って感じで歩いてたんですね。その思いがあったので、時よ止まれじゃないですけど、そういう思いでチッチを描き続けました」

回り続けるメリーゴーラウンド

 1962年、21歳で出版社に原稿を持ち込むと即採用された。雑誌「美しい十代」で見開き2ページで連載されるようになった4こま漫画「小さな恋のものがたり」は静かにファンを増やしていった。

 当時、女性向けの4こま漫画といえば「サザエさん」だけ。手塚治虫さんらが描くヒロインは美しい「完璧な」女性が定番だった。一方、チッチは勉強が苦手で容姿にもコンプレックスがある。それでも一生懸命に恋をする姿が「等身大の物語」として少女たちに支持された。

 さくらんぼが実る毎年5月に刊行してきた物語は、恋のライバルが現れる9、10集でミリオンセラーに到達した。フォークダンスに黒電話、ジャズ喫茶に焼き芋の屋台…。みつはしさんが2児の母となり、時が流れても「小さな恋のものがたり」は高校時代のまま、メリーゴーラウンドのように四季を巡り続けた。

会場には「小さな恋のものがたり」の初期原稿やみつはしさん愛用の画材もあった
母娘で思い出を語りながら眺める姿も=東京都の町田市民文学館









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