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元記者ピロシの醤油屋今日談

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5000ー3523=を瞬時に…外回りと「暗算の壁」 醤油屋今日談(26)

2018年12月28日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 仕事中、肌身離さず持ち歩いているウエストポーチ。中には、釣り銭用の小銭が入った巾着袋が入っている

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 「合計で3523円ですね。5000円お預かりしましたので、お返しは…」

 今月から担当することになった商品の配達業務。意外にも欠かせないスキルの一つが、代金を受け取る際の速くて正確なおつりの計算だ。

 電卓を使うことも可能だが、忙しい仕事の手を休めてお買い上げいただくこともあるので、やり取りにかかる時間をできるだけ短くするのが基本。そのためには、暗算が欠かせない。実際、私の「師匠」であるこの道10年の先輩は、お金をもらうとお釣りの金額を即答する才能の持ち主だ。

 かつて「計算が苦手な経済記者」という自虐プロフィールで笑いを取っていた(と自負している)私だが、今さらながら、あれは自虐じゃなくて事実だったと思い知らされている。

 一回の販売価格は1000〜3000円分くらいが主なので、4桁の引き算になることが多い。1円たりとて間違えが許されない恐怖感から、電卓で確認をしないと、頭に浮かんだ数字を口に出す勇気が持てないのだ。

 お釣りを渡す時は、身に着けているウエストポーチに入れた巾着袋に手を突っ込み、小銭をジャラジャラとかき分けながら釣り銭を探すのだが、頭の中は金額の検算でいっぱいなので、ここでも時間がかかってしまう。

 一日の販売金額は、出先から戻った後に事務担当者にデータを集計してもらい、翌朝に手元にあるお金と照合される。もし1円でも違えば、構内放送で呼び出されて指摘を受けるので、慎重にならざるを得ない。しかし、慎重になればなるほど、お客さまをイライラさせてしまう。

 師匠は「外回りは、社内の決まりとお客さまのご要望の間でいつも板挟みだよ」とボヤいているが、なんとも含蓄のある表現だと思う。お釣りの受け渡しはほんの序の口。「顧客満足度を高める」という言い尽くされた言葉を実現するのは、そう簡単ではないし、ストレスも伴いやすいことが、薄々分かってきた。

 それにしても、4桁の暗算すらロクにできないのに、やれ「〇〇社の業績悪化の原因は云々」とか「××社の経営課題は云々」、などと分かったようなことを執筆していたかつての自分は一体何だったのだろう。

 「自分が書いた言葉の意味、ホントに分かってる?」とツッコミを入れる方がいなくてラッキーだった、とさえ思う。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ふと足元を見つめる年の暮れ。このコーナーもスタートから丸1年になりました。1年間、ありがとうございました。よいお年をお迎えください。










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