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元徴用工、長崎市控訴断念 被爆者手帳、22日以降交付へ

2019年01月12日 03時00分 更新


  • 控訴しない方針を報道陣に説明する田上富久市長=11日午後0時半ごろ、長崎市

 戦時中に三菱重工業長崎造船所(長崎市)に徴用され、長崎原爆で被爆したとして韓国人男性3人が長崎市と国に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟で、田上富久市長は11日、原告を被爆者と認めた8日の長崎地裁判決を受け入れ、控訴しない考えを明らかにした。田上市長は「交付に時間がかかった点は心情として申し訳なかった」と語った。控訴期限の22日以降、早期に手帳を交付する。

 田上市長は、原爆に遭った人々の高齢化を念頭に「できるだけ早く手帳を交付する姿勢はこれからも持っていく」とも述べた。地裁判決については「原告の主張の一貫性、信用性について心証を含めた判断があった」とした上で、市が申請を却下した審査手法の違法性までは認定していないと強調。今回は「個別」の事例として判決を尊重したとの認識を示し、「幅広い救済につながる」と期待する原告側の受け止めとは一線を画した。

 90代の原告3人は造船所や宿舎で被爆したとして手帳交付を申請したが、市は「証言が資料と整合しないなど信ぴょう性に疑問がある」として却下した。地裁判決は時間の経過により直接的な裏付け証拠がなかったり、本人の記憶に齟齬(そご)があったりしても不自然ではないと指摘。証言の中核部分の信用性を積極的に評価し、原告が原爆投下時に被爆地域にいたと認定した。 (華山哲幸)

「コメントの段階にない」

 厚生労働省健康局原子爆弾被爆者援護対策室の話 まだコメントする段階にはない。(控訴の判断は)今も国と長崎市で協議を続けており、今回は長崎市の考えを公表しただけだと受け止めている。

   ◇   ◇

「証言重視」認定反映を

 【解説】原告の元徴用工への被爆者健康手帳交付を命じた長崎地裁判決は、本人証言の中核部分が信用できれば被爆者と認めるべきだとする、従来より踏み込んだ判断だった。控訴を断念した長崎市の田上富久市長は「認定基準は基本的に変えない」とするが、判決を受け入れる以上、新たな指針として認定審査への反映を迫られる。

 手帳交付には原則、家族以外の証人2人や客観的資料が必要とされる。被爆から73年が過ぎた現在では証明が困難なケースが多く、地裁判決は「直接的な裏付け証拠がないとしても不自然ではない」と言及。行政による「総合判断」は認めつつ、より柔軟な対応への転換を促していた。

 原告を支援してきた市民団体の平野伸人共同代表(72)は市の控訴断念を歓迎しながらも、あくまで個別案件に対する判断だと強調する田上市長の認識を疑問視。「泣き寝入りを強いられている人もいる。被爆者認定審査の全体に生かしてほしい」と訴えた。

 「証言重視」の審査で柔軟な被爆者認定につながるのではないかという期待感から、居住地や国籍を問わず、これまで手続きをためらっていたり、過去に却下されたりした「被爆者」の認定申請が今後、増える可能性もある。切実な声にどう向き合うのか。被爆地の自治体の姿勢に厳しい視線が注がれる。 (布谷真基)










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