ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

水産県・長崎の逸品、売り込めてるの? ハード、ソフト両面に課題

2019年03月11日 03時00分 更新

記者:中原岳


  • 県が推進するブランド「長崎俵物」の品評会。海外への輸出や生産増が課題だ

 長崎は「鎖国」をしているという。いや、そんなはずはない。江戸期に海外に開かれた出島から、水産加工品を俵に詰めた「俵物」を輸出した歴史ある土地だ。

 長崎の閉鎖性を指摘する衝撃的なリポートをまとめたのは、日本銀行長崎支店長の平家達史さん。水産県を自負する長崎が、人口減で消費低迷に苦しむ長崎が、目を向けるべき海外を見ていないことにもどかしさを感じる1人。1月の記者会見で言い放った。

 「今の長崎は、日本の西の終着駅でしかない。アジアに最も近い利点を生かせていない」

 平家さんはデータを根拠にする。長崎港のコンテナ収容能力は、国際標準規格のコンテナ(約33立方メートル)526個分。2020年度には倍増するが、それでも最も近い輸出港である伊万里港の4分の1に満たない。海外向け定期コンテナ航路は週3便の韓国行きのみだ。

 県のまとめでも、17年に長崎港から輸出した9470トンのうち3割は再利用可能な古紙などで、売り込むべき特産の水産物は1トン未満。平家さんは「輸出の玄関口としての機能が不十分」と結論付けた。

 一方、港を管理する県は鎖国との指摘に反論する。開会中の議会の答弁で、坂本清一水産部長は鮮魚を中心に13年度からの5年間で、輸出は約3倍に当たる21億400万円に増えたことをPR。21年度までに40億円に倍増する計画を明かした。

 ただ驚くことに、鮮魚を含む水産物の大半が県内からではなく、海外との太い流通のパイプが確立された伊万里港や福岡空港を経由して送られる。県内で最も水揚げの多い長崎市内の漁港から搬送に2時間を要する上に経費もかかるが、便数が少なく行き先も限られる長崎よりはいい、というのだ。水産加工流通課は「新鮮さが命の鮮魚は日々、生産地から消費地に届けることが大切。長崎の港や空港を使わないのはやむを得ない」と説明する。

 そんな事情を改めて平家さんに説明すると、こう返してきた。「国内の輸送に使う2時間を、アジアの港からの輸送時間に充てることで商圏をさらに広げることができる」

 力強い意見だが、県はどうしても納得できない。各課の主張をまとめると、こうなる。 「長崎からダイレクトに輸出できるのが理想だが、航路、航空路の誘致は容易ではない」(水産加工流通課)

 「長崎は西の端にあるので集荷が難しく、入り江が複雑なためそもそも物流港には適していない」(港湾課)

 身もふたもない言い方だが、地元特産の「かんぼこ(蒲鉾(かまぼこ))」「からすみ」に代表される「長崎俵物」にヒントがありそうだ。俵物の歴史にあやかって、県水産加工振興協会が商標登録。国内の百貨店でギフト商品として人気を集める。鮮魚とは異なり日持ちも可能で、週3便の航路でも対応できる。輸出が増えれば航路の誘致が弾み、ハード整備を進める算段もつく。

 ただ、長崎には家族経営の中小事業者が多く、少子高齢化で後継者がいないなど課題もあって生産拡大や輸出には二の足を踏む。現地の好みや習慣にあわせて改良することも必要だが、事業者からは「自分たちがそこまで調べることは難しい」との声も上がる。

 そんな弱点をフォローする細やかな行政のソフト対策はないものだろうか。県は「まずは鮮魚の売り出しを優先したい」とは言うものの、こだわる必要はないだろう。長崎の名を冠した俵物が再び、アジア市場を席巻する姿を見たい。










特集 qレポートの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事