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【第1回キジ懇】めんたいこの「成長戦略」を分析してみた

2014年05月07日 03時00分 更新

記者:川合秀紀


  • 「めんべい」の戦略について語る山口油屋福太郎取締役の樋口元信氏=4月28日、西日本新聞社本社

  • 飛び入り参加したふくや取締役の川原武浩氏

  • 参加者が活発な議論が交わしたグループワークの様子

  • ビジネススクールの受講生も多く参加した

 「qBiz」掲載記事をネタに、九州のビジネスを深く、楽しく考えるワークショップ「今月のキジ懇」第1回が4月28日夜、福岡市の西日本新聞社で開かれた。福岡発祥の辛子めんたいこ業界の取り組みを通して、成熟期に入った市場で企業はどんな手を打つべきなのか、熱い議論が交わされた。

 39歳以下限定で開かれた今回は約30人が参加し、半数程度がビジネススクール受講生。めんたいこ業界から、スペシャルゲストの経営幹部のほか、競合他社の幹部も飛び入りで加わった。

 ■スペシャルゲスト:樋口元信氏(山口油屋福太郎取締役)
 ■サプライズゲスト:川原武浩氏(ふくや取締役)
 ■アドバイザー(講師):井関隆行(西日本新聞社員=グロービス経営大学院福岡校受講生)
 ■記者:仲山美葵、黒石規之

【今回のネタ記事】
めんたいこ業界、競争激化 
福太郎が高校跡地に新「めんべい」工場 
ラーメン&せんべいで受験生応援
ふくや、香港に和食店 初の海外飲食展開


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 どんな商品・サービスも、導入〜成長〜成熟〜衰退をたどる。「プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)」である。戦略を考えるとき、その商品や企業が置かれた市場がいま、どの段階にあるのかを把握することが前提となる。

 その点、辛子めんたいこ市場はいま、成熟〜衰退期にあるとみていい。(1)贈答用などのいわゆる「一本もの」の売り上げは低迷し、(2)一方で、コンビニのおにぎり用やお菓子、海外展開などの取り組みがなされている。アドバイザーは、掲載記事から、まずこうした概要を紹介した。

 仲山記者「いろいろなところでめんたいこが使われるようになっており、イメージが広がっている。半面、広がりすぎたイメージをもう一度再構築するすべきではないか、それを業界全体として取り組むことが必要かと思う」

 黒石記者「海外展開について取材した。まだ浸透していないが、人口減少を見据え、布石を打っている。一本ものなどそのままじゃなく、食材として使う和食店を香港で始めたふくやのように、現地の人にどう普及するか注目したい」
 
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 その後、参加者に提示したのは「アンゾフの成長マトリクス」

 戦略を考える際に使う基本的なフレームワークのひとつだ。縦軸に「市場」、横軸に「商品」を取り、それぞれ「既存」、「新規」に分け、4つの組み合わせからなるマトリクス(配列)にしたもの。今後の成長戦略(商品)を、どの組み合わせに落とし込んで進めるべきか、分かりやすく考えることができる。



 では、この人気商品はどう位置付ければいいのだろうか。

 山口油屋福太郎(福岡市)が2001年、「常温で手軽に食べられるものを」というコンセプトで発売し、大ヒットしている菓子「めんべい」。スペシャルゲストとして登壇した同社の樋口取締役は「めんべい」の名付け親でもある。

 めんべいを「成長マトリクス」に落とし込めば、このようになる。



 樋口氏によると、めんべいは、受験生向け、辛口味、北海道産じゃがいもを使ったものなど、さまざまな商品シリーズに派生し、さらに売り上げを伸ばしている。この戦略は、以下の図のようにまとめられる。



 (1)「既存」商品×「既存」市場→お土産市場を主とした定番「めんべい」
 (2)「既存」商品×「新規」市場→スーパーやコンビニでのばら売り
 (3)「新規」商品×「既存」市場→お土産市場での辛口などのシリーズ化
 (4)「新規」商品×「新規」市場→詰め合わせギフトや受験生向けシリーズ


 樋口氏は「確かにめんたいこ自体の売り上げは減っているが、2013年には『めんべい』シリーズの売り上げが、初めてめんたいこを上回った」ことを明かした。まさに、成熟〜衰退期における成長戦略が奏功している。

※当日の資料はこちら(約40ページ、要登録)。

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 アドバイザーが次に参加者へ提示したのが、今回の肝。この「成長マトリクス」を使って、「あなたが山口油屋福太郎の事業部長だったら、どんな市場に、どんなめんたいこ商品を打ち出すか?」というお題を出し、議論が盛り上がった。8グループの発表は次のとおり。

 (1)市場→畜産業界/商品→餌として使い「めんたいこ豚」ブランド展開
 (2)市場→おひとり様市場/商品→「ほっともっと」のトッピング
 (3)市場→お土産市場/商品→消費期限の長い「めんたい缶」
 (4)市場→健康市場/商品→トクホのめんたい
 (5)市場→子ども市場/商品→キャラクターを駆使した辛くないめんたいこ
 (6)市場→個食市場/商品→小分けパック・冷凍できる「ぽろっとめんたい」
 (7)市場→欧州市場/商品→ワインに合う燻製めんたい
 (8)市場→海外市場/商品→「ジャパニーズ・キャビア」として高級店展開

 アドバイザーの井関は「トップが判断する上で、カギを握るのは2点。市場規模・成長性があるかどうか。そして自社が持っている強みを生かせるかどうか」と指摘した。
 
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 山口油屋福太郎取締役の樋口氏は「皆さんが考えたアイデアの中には、当社が過去やった取り組みもありました。そう考えると、皆さんに負けずにやってきたんだな、と思いました(笑)。アイデアが出る、ということはそれだけ夢があるということ」としたうえで、「めんべいは、培ってきた技術があったからできた商品。今後は地域の6次産業化支援をしながら、全国に出していき、夢として海外展開も考えています」と構想を語った。

 飛び入り参加したふくや取締役の川原氏にもコメントを依頼すると、「目の付けどころが素晴らしいです。実際、めんたいこ豚はありますし、『ハカタ・キャビア』を海外で出している例もあります。あと必要なのは、市場に浸透させていく『粘り』なんです。フレームワークを使うと同じような結論になりがちですが、そこを超える知識や発想が大事」と、一歩先のリアルな指摘を披露。

 チューブにめんたいこを詰めた人気の新商品「tubutube(ツブチューブ)」を引き合いに出し、こう語った。「新商品を投入するときはターゲットを絞りがち。tubutubeも20〜40代向けに出しましたが、あまり強調していません。実際、売り上げの半分が60代以上なんです。既存市場でも売れると、(新規市場を開拓する新商品として)粘れるんです

 樋口氏は九州大学ビジネス・スクール(福岡市)で、川原氏も九州・アジア経営塾(同)で、それぞれビジネス理論などを学んだうえで、実際の経営幹部として現実と格闘を続けるからこそのコメント。参加者に最後に示されたのも、それぞれが働く自社ならどうするか、を考える「セルフワーク」だった。

※当日の資料はこちら(約40ページ、要登録)。
※次回「今月のキジ懇」は、近日中に詳細をお知らせします。










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