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【第2回キジ懇】「倒産リスク」の意外な見方を教わった

2014年06月13日 03時00分 更新

記者:川合秀紀


  • 講師を務めた帝国データバンク福岡支店の江口一樹氏=5月30日、福岡市の西日本新聞社

  • 約30人のビジネスパーソンが参加し、活発な議論が交わされた

 掲載記事を「元ネタ」に、九州のビジネスについて体験的に学ぶqBiz流ワークショップ「今月のキジ懇」。第2回は「倒産〜教科書に載ってないプロの見方」と題し、5月30日夜、福岡市の西日本新聞本社で開いた。概要をお伝えする。

 ■アドバイザー(講師):江口一樹氏(帝国データバンク福岡支店情報部長)
 ■司会進行:田崎行範(西日本新聞広告局、九州大学ビジネススクール受講生)
 ■担当記者:下村ゆかり(西日本新聞経済部記者)

 ■ネタ記事
 ・九州の倒産、44年ぶり低水準 13年度、建設で大幅減 
 ・九州の倒産、私的整理含めば2カ月連続減少 
 ・フリーペーパー草分け「ガリヤ」自己破産申請へ
 ・宮崎・日南の王手門酒造、民事再生法を申請
 ・倒産の今後は 帝国データ・江口情報部長に聞く

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 江口氏は元新聞記者から帝国データバンクに入社。約25年もの間、倒産の現場を歩いてきた。そのうち、最も記憶に残るエピソードの一つに挙げたのが、2008年秋のリーマン・ショックに端を発する世界的な経済危機。江口氏はちょうど東京勤務で信用調査を担当していた。

 金融市場がまひしたため、極度な信用不安が広がり、実体経済にも影響が及んだ。「デベロッパーや建設業界の倒産が目立ったが、『受注蒸発』で電機業界も危機に陥った。実は、倒産の予定稿(倒産を速報するリリース)を用意した中で、最も規模が大きかったのが有名な電機メーカーだった」と明かし、参加者を驚かせた。

 一方、現在の倒産件数は、「ネタ記事」にあるように記録的な低水準にある。中小企業金融円滑化法が期限切れした後も、金融庁などが同様の対応を金融機関に求め続けているためだ。「倒産とは金融事象」が、江口氏の持論。「倒産件数はいまが底。円安で燃料や材料費が上昇しているため、食品や小売り、運送業界が厳しい」としたうえで、「(倒産に含まれない)廃業が増加しているのが実態」と指摘した。下村記者も「廃業増加は後継者難が理由。銀行が力を入れているのもその対応で、情報の早い税理士らの人脈をつくろうとしている」と語った。

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 その後、「経営状況が危ない会社の見分け方」をテーマに最初のグループワークを行った。

 会社訪問などで気づく可能性がある、定性的な項目を参加者に考えてもらった。「ヒト・モノ・カネ」(江口氏)という三つの要素に分けて調査する“入り口”のようなものだろうか。参加者が挙げた項目は次のようなものだった。

 ・エース1人に依存している
 ・電話応対の社員がすごく謝っている
 ・出前を洗わずに返している
 ・社長の羽振りが良い
 ・会社の敷地に噴水があるが、水が出ていない
 ・離職率が高い
 ・清掃が行き届いていない
 ・登記簿の主要業務が頻繁に変更される
 ・社長の不在が多く、連絡がつきにくい

 江口氏は、実際に調査マンが会社訪問などで着目するリストを示して講評した。ポイントを一部挙げると…

 ■「登記の変更」という視点は鋭い
 ■「社長が数字に弱い」が最も大きいリスク。たとえばヒアリングで「売り上げ」を聞いても隠されるが、「取引社数と、その前年比増減は?」と聞くと分かる→ヒトの要素
 ■「清掃」状況は社内のモチベーション低下を示す材料→ヒトの要素
 ■「モノ」の要素では、会社訪問時に倉庫や工場を見せてもらうといい。在庫や整理整頓の状況、稼働率を把握できる


 江口氏は、過去倒産した小売り大手の取引先商社に聞いた後日談を披露。その商社関係者は事前に倒産リスクを察知し、傷口が少なく済んだという。「小売り企業の店舗に行き、婦人服の売れ筋のサイズがなかったのを見つけたそうです。一見すると品数はあるが、よく見ると不良在庫しか置いていない。これであやしいと思ったということです」。

 そのほか、銀行との関係で“予兆”をつかむ見方もあると指摘。「メーンバンク頼みではないシンジケート(協調)融資が増えているが、裏返すと銀行がその融資を怖がり、積極的に与信をしていない表れとも取れる」と述べた。

 江口氏は「倒産リスクと言っても、一番大事なのは、消費者の視点で見ること。『常識的に考えること』を大事にすればいいと思う」と語った。

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 三つの要素のうちの「カネ」については、やはり「財務諸表」の見方が重要となる。1年間の収支を示す損益計算書(PL)、その時点の財務・資産の状況を示す貸借対照表(BS)、現金をどう出し入れしたかを示すキャッシュフロー計算書(CF)だ。

 今回は、江口氏がモデルとなるA・B2社の財務諸表を作り、どちらが、なぜ倒産リスクが高い企業かをグループワークで分析してもらった。今回の「キジ懇」のメーンである。

 詳細は省くが、参加者からは「銀行が重視しがちな流動資産が多いが、関係会社などを使って操作しやすい」「固定負債が多いのに借入金利が低いのが気になる」などの意見があった。

 江口氏の主な講評ポイントは次の通り。

 ■流動比率(流動資産/流動負債)を重視する教科書があるが、私はあてにしない。一番粉飾しやすいからだ
 ■逆に現預金や借入金は粉飾しづらい部分
 ■借入金利が低すぎる場合は利払い猶予の状態が疑われる
 ■資本剰余金が多すぎるのは見せかけ増資の可能性もある
 ■経常収支比率がマイナスなのに利益がプラスだと粉飾が濃厚

 最後に、ある課題が出された。 「BS、CFが大事だが、PLからでも売り上げ水増しの疑いが分かる方法が実はある。ある数値を付け加えるが、その数値とは?」。先のグループワークでは核心に迫った参加者たちもなかなか答えられなかった。

 ヒントは「財務諸表に出てこない、でもあまりにも常識的な数値」だ(答えは次のページ)。

講演する江口氏(右)と、自らの失敗談も披露した西日本新聞経済部の下村ゆかり記者
司会役の田崎行範・西日本新聞広告局社員









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