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「ミスター火山学」が批判を続ける理由

2014年11月20日 03時00分 更新

記者:長谷川彰、竹次稔、森井徹


  • 火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長

    ふじい・としつぐ 現在は東大名誉教授、NPO法人環境防災総合政策研究機構理事(環境・防災研究所長)、山梨県富士山科学研究所長。03年から火山噴火予知連絡会長も。専門はマグマ学。1997〜2001年東大地震研究所長、06〜08年日本火山学会長を務めた。福岡県田川市出身。67歳。

 火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏。東京大地震研究所長(現名誉教授)、日本火山学会長などを歴任した「ミスター火山学」。原発の火山影響について、予知には限界があり「原子力規制委員会の判断はおかしい」などと正面から批判を続けている。周辺が「あまりに率直に話しすぎる」という同氏に本紙がインタビュー(実施は11月3日)。発言の背景も交えながら、その詳細をまとめた。


◆カルデラ噴火、国全体で対処を

 「カルデラ噴火(巨大噴火)についてわれわれが分かっているのは、おおよそ1万年に1回という国内での発生頻度だけ。カルデラの半分規模の噴火なら、6000年に1回ぐらい起きている。今のわれわれの能力では、切迫度は言えない。『あと1000年は大丈夫』とかは分からない。その切迫度を読み取る手法を考えないといけない。それには国を挙げて研究体制を整えないと、とても間に合わない。これは原発問題が浮上する前から言ってきたこと」

 藤井氏によると、カルデラ噴火の発生で、周辺地域は火砕流などで壊滅的な被害を受ける。最後のカルデラ噴火は縄文時代、約7300年前の「鬼界カルデラ」(鹿児島県南部)。関西で約30センチ、東京近辺で約10センチの火山灰が積もったとされる。想像を超える火山灰が降り積もる重みで、各地の送電線が切れて広域停電が起こり、電車も飛行機も動かない。農作物は全滅し、原発だけの問題ではない、と言うのだ。神戸大の巽好幸(たつみ・よしゆき)教授らが10月末発表した「巨大カルデラ噴火のメカニズムとリスク」の発表資料によると、鬼界カルデラの噴火で「少なくとも南九州の縄文文化は壊滅し、その回復に1000年近くかかったと言われる」という。

 「日本の株価も暴落し、経済もめちゃくちゃになる。火山学だけでなく、社会学などを含めて国を守るためにどうすればいいのか、研究を急がないといけないと提言した。カルデラ噴火が起きたら、国がつぶれるようなことになるからだ。だけど、まったく(世の中に)動きはなかった」

 内閣府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」が昨年5月に出した提言のことだ。藤井氏は座長。鹿児島・桜島の大正噴火(1914年)を超えるような大規模、あるいはカルデラなどの巨大噴火への備えを初めて促した。自治体の地域防災計画では、大正噴火を超えるような規模の噴火がそもそも想定されていない。提言のメッセージが世の中に理解されていないことに、藤井氏は不満を抱いていた。原子力規制委員会が、原発に対する基準「火山影響評価ガイド」をとりまとめたのはその直後、同年6月だった。

 「ガイドラインは予知できる、という前提で作られている。ガイドラインを見てがくぜんとした。われわれの認識とまるで違っていたから。火山の状況をモニタリング(監視)し、カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させると言うけれど、今のわれわれの能力ではとても分からない。これから先40年(原発の運転期間)以内に何が起きるか予知ができないと、確率が低いかどうかというのは何も言えないわけだから。論理的に言えば、判定できないということなら立地は不可能となるはずだし、念のためにモニタリングしてカルデラ噴火の予兆があったら核燃料棒を片付けるというが、だいたい、何か異常があったとき、それがカルデラ噴火なのか、もっと小さい噴火なのか、ということは、今のわれわれの能力では分からないわけですよ」

 カルデラ噴火はあまりに頻度が低く、これまで本格的な研究がなされていなかったが、ようやく噴火の前兆現象を捉える研究が本年度から始まった。西日本新聞も4月23日朝刊1面で、そのことを伝えている。火山学者にとっても、分からないことが多すぎるのだ。火山学の常識に反して見える規制委や九州電力の評価に、藤井氏は我慢がならない。





◆九電の主張「不適切」

 「たまたまギリシャの論文で、カルデラ噴火前の最終期にはマグマが大量に堆積するとあり、九電はそれに引きずられた。規制委も悪のりした。まやかしの論理だ」










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