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2016熊本地震

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耐震係数、地域差に疑問 「地震の実態反映せず」 「妥当性ある」認める識者も

2016年05月03日 03時00分 更新

記者:竹次稔、宮崎拓朗、御厨尚陽


 耐震基準の地域係数は過去の地震記録で決められたが、2000年以降の大地震の発生場所をみると、「実態を反映していない」との指摘は説得力をもつ。ただ、係数を変更すれば既存の建物への影響は大きく、難しい判断が迫られる。現在の建築基準法では震度7が連続して起きる事態は想定外といえ、対策の限界も指摘される。

 東京都内で2日、防災関連の50超の学会が、合同で熊本地震の緊急報告会を開いた。参加した専門家の間でも意見が割れた。

 日本災害復興学会長で、明治大大学院の中林一樹特任教授(都市防災学)は「全国の大きな地震は、発生確率に関係なく起きている。本来は地域係数は一律にすべきだ」と現行制度を疑問視。「国が見直さないとしても、熊本県は今こそ独自に条例を作って引き上げを検討してほしい。特に行政庁舎などの重要施設は急ぐべきだ」とも訴えた。

 福岡市は08年、警固断層などを震源とする地震に備えるため、高さ20メートル以上の建物を建てる際、地域係数を「1・0」とするよう促す条例を施行。静岡県も南海トラフ地震対策で「1・2」とする県要綱を定めた。だが、いずれも法的な拘束力はない。

 一方、福岡大の高山峯夫教授(耐震設計)は「発生頻度でみると首都圏などの方が多く、地域係数の妥当性は一定程度ある。一律に係数を引き上げると既存建物の多くが基準以下となり、影響は大きい。本当に見直しが必要かを見極める詳細な現地調査が必要」と慎重な姿勢だ。

 地域係数以外にも、建築基準法に突きつけられた課題がある。熊本地震の特徴は震度7が連続して発生した点。前震では持ちこたえたが、本震で全半壊した建物が多くあった。

 これらの大半は、1981年5月以前の旧耐震基準下で建てられていた。だが、強化された81年6月以降の新耐震基準も1度の大きな地震しか想定しておらず、同法の限界とも言える。高山教授は「大きな地震の連続をどこまで考慮すべきか。活断層近くの建物の耐震化をどうしたらいいのか。今回耐震設計に突きつけられた課題」と指摘する。

 建物倒壊の背景は建築基準だけではない。京都大防災研究所の釜井俊孝教授(応用地質学)は、被害が大きかった熊本県益城町では、町役場周辺で生じた地滑りも倒壊の原因の一つと分析。「耐震化の議論だけでなく、地盤の強弱も行政が把握し、住民に伝える努力をしてほしい」と話す。

 社会全体で再検討を
 名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫センター長(建築耐震工学)の話
 

 地震地域係数は、地震の揺れの大きさよりも、発生頻度によって左右されやすい。建築基準法そのものが、絶対的な安全を保証するわけではなく、国民の生命や財産を守るための最低限の基準を定めた法律だからだ。

 業者も「過剰設計」と指摘される恐れがあるため、地域の地震地域係数に上乗せして設計するケースは少ないのが現状だ。熊本地震の被害の大きさを考えると、地震地域係数も含め、建築基準のあり方を再検討すべきだ。

 これは社会全体の価値観の問題でもある。一層の耐震強化を進めることが有効だが、当然コストも高くなる。経済効率を重視する考えもあれば、より安全を求める考え方もある。熊本地震を契機に、社会全体で考えるべき課題だ。










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