ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

東洋経済オンラインから

一覧ページへ

開業5年、九州新幹線で「最も恩恵を受けた地域」

2016年05月27日 03時00分 更新

記者:櫛引素夫氏


  • JR熊本駅から鹿児島中央へ向け出発する九州新幹線の「つばめ」=4月27日

  • 全線開業5周年イベントのチラシ=福岡県新大牟田駅(2016年3月、筆者撮影)

  • 鹿児島中央駅で乗客に聞き取り調査する九州経済研究所員(2016年3月、筆者撮影)

  • 博多〜新八代の特急「リレーつばめ」=2010年03月

  • 開業12年目を迎えた鹿児島中央駅(2016年3月、筆者撮影)

  • 鹿児島中央駅地区との競合に直面している鹿児島市・天文館地区(2016年3月、筆者撮影)

櫛引 素夫:青森大学教授・地域ジャーナリスト・専門地域調査士

 九州新幹線は今春、博多〜鹿児島中央間の全線開業から5周年を迎えた。2004年に新八代〜鹿児島中央間が部分開業して南九州の交通環境を一変させた。2011年の全線開業時は、3月12日のテープカット前日に東日本大震災が発生するという試練に直面した。その後、利用は順調に推移し、全国を結ぶ新幹線ネットワークの「西の要」、そして「九州島内の足」としての存在感を発揮してきた。

 だが、全線開業5周年から1カ月後の2016年4月、最大震度7を記録した熊本地震が発生。長期の運休を挟み、大型連休前には全線が復旧したが、余震はやまず、ダイヤは今も平常には戻っていない。

 筆者は3月半ば、『週刊東洋経済?臨時増刊号』の記事執筆のため、沿線を駆け足で訪れていた。この調査や過去のヒアリングを基に、あらためて重要性を印象づけた九州新幹線の足跡と課題をまとめてみた。

開業時の無念、5周年で振り払う

 3月9日夜、1年半ぶりに訪れた福岡市・博多駅前の「JR博多シティ」一帯は、桜色のイルミネーションに彩られていた。九州新幹線の節目を祝う明かりに、しばし見とれた。

 2011年3月12日の全線開業のニュースは、東日本大震災の余波で全国に届かず、記念式典も取りやめとなった。後に国際広告祭「カンヌライオンズ2011」で金賞を受賞したJR九州の祝賀CMは、わずか3日間で放映が中止された。

 今回の調査では、その無念さをようやく振り払うような「5周年」の文字やポスターが、博多駅や沿線各地の至るところで目に付いた。

 訪問は、九州新幹線全駅の現状確認と、一連の開業効果を調査してきた九州経済調査協会(福岡市、略称・九経調)、地方経済総合研究所(熊本市)、鹿児島経済研究所(現・九州経済研究所、鹿児島市)の3シンクタンクへのヒアリングが主な目的だった。

 九経調は、大谷友男・調査研究部主任研究員が中心となり、2016年3月の「九州経済調査月報」にリポートを公表していた。他の2研究所は、5周年を契機として新たな調査に着手しつつあった。

 ひと駅ごとに降車して旅客の乗降状況や駅周辺を観察するうち、現地でなくては把握できない空気感が伝わってきた。小規模な駅でも一定の通勤・通学需要があること、列車によって乗車率に大きなばらつきがあること、市街地や在来線駅から離れた駅の中には、交通の結節点として苦戦しているケースもあるらしいこと、博多駅や鹿児島中央駅の一帯が活気を増していること――。九経調の大谷主任研究員が指摘する「対東京という『ドル箱』の需要がない宿命ゆえに、ローカルからローカルの需要を拾い上げる」経営スタイル、そして沿線の効果が一様でない状況を読み取った。

鹿児島側から建設を開始したワケ

 九州新幹線は1973年に整備計画が決定した「整備新幹線」の1路線だ。九州には開業済みの区間のほか、分岐して長崎へ向かう路線もあるため、正式にはそれぞれ「鹿児島ルート」「長崎ルート」と呼び分けられる。鹿児島ルートは東北新幹線・盛岡以北(盛岡〜新青森)、北陸新幹線(高崎〜大阪)と並行して工事が進み、整備計画決定から38年で全線開業にこぎ着けた。

 他の整備新幹線は、最大の需要を見込める東京側から順次、建設工事が進んだ。しかし、鹿児島ルートは、沿線最大の都市・福岡側からではなく、終点の鹿児島側が先に着工し、部分開業した。主な理由は、在来線の鹿児島本線は南側にカーブが多く特急列車の速度を上げられないため、新幹線建設による時間短縮効果が大きいこと、そして、財源確保が難しい中で全線建設が頓挫しないよう、あえて需要の大きな博多側を後回しにしたとされる。

 2004年の先行開業は、「鹿児島本線の南側の高速化」という、いわばローカル色の強い開業だった。それでも、今なお九州新幹線の顔となっている800系列車「つばめ」と在来線特急「リレーつばめ」の投入に伴い、3時間40分を要していた博多〜西鹿児島(現・鹿児島中央)間は、新八代(熊本県)での乗り換えを挟んで2時間12分まで短縮され、主に観光面で鹿児島県内に多くの恩恵をもたらした。

 開業に合わせて、JR九州は100億円を投じて鹿児島中央駅一帯を整備し、当時としては九州最大の駅ビル「アミュプラザ鹿児島」を建設した。以降、同駅周辺は、約1.5km東にある鹿児島市の繁華街・天文館地区に匹敵する商業エリアに成長した。

 さらに、2011年の全線開業に伴い、博多〜熊本間は所要時間が1時間13分から33分と半減した。熊本〜鹿児島中央間は新八代での乗り換えが解消されて57分から47分に、博多〜鹿児島中央間も同じく2時間12分から1時間17分となった。山陽新幹線直通の「みずほ」「さくら」運行によって、時間距離の短縮は新大阪以西全体に及び、新大阪〜熊本間は3時間57分から2時間58分に、新大阪〜鹿児島間は5時間2分から3時間42分に縮まった。

 国土交通省の資料によれば、在来線当時の博多〜熊本間の輸送人員は1日1万7900人だったが、開業4年目の2014年度には2万6300人へと47%伸びた。同じく熊本〜鹿児島中央間は8500人から1万3600人へと60%伸び、いずれもJR九州が目指していた「40%増」をクリアした。

 上記のほかにも、九州新幹線についてはさまざまなデータが公表されている。詳細な分析は割愛するが、大きなスケールでみれば関西や山陽地域から南九州への旅客流動と、九州島内の流動がともに活発化したことは間違いない。

新鳥栖駅に到着した「さくら451号」(2016年3月、筆者撮影)
全線開業を祝う看板=熊本市下通町(2016年3月、筆者撮影)
九州新幹線全線開業に合わせて装いを一新したJR博多シティ(2016年3月、筆者撮影)
経営環境が厳しさを増す肥薩おれんじ鉄道=鹿児島県出水駅(2016年3月、筆者撮影)









九州経済 ニュースの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事