福岡市が、耕作放棄地の再生・発生抑制につながるとして、対象農地にヤギを放牧するユニークな助成事業を始めたものの、応募がゼロだったことが分かった。募集期間は当初、本年度までの3年間を予定していたが、初年度の2014年度に応募ゼロで、15年4月1日付で事業を廃止していた。耕作放棄地は全国的に増加傾向で、その歯止めが課題だが、行政による有効策構築の難しさを示す一例と言えそうだ。
自己負担 ネックに
市は10〜13年度、市内3カ所で、ヤギが雑草を食べることでどれだけ効果が上がるかを検証。(1)高齢農業者の草刈りへの労力軽減に効果的(2)特に傾斜の多い果樹園で効果的−などを確認した。4年間で投じた費用は約167万円だった。
14年度から「農地保全のためのヤギ放牧を支援します〜耕作放棄地活性化事業」と銘打ち、経費助成の公募を開始。65歳以上の高齢農業者などを対象に、農地は「市内の20アール以上の耕作放棄地、あるいは耕作放棄地となる恐れがある農地」などとして、利用を呼び掛けた。対象経費は、ヤギ購入費や、柵や小屋の購入・設置費で、補助率は事業費の2分の1以内。助成額の上限は16万5千円だった。
だが14年度は2件の助成を見込んで予算を組んだものの応募はなく、次年度以降の事業継続も取りやめた。市の担当者は「事業費の半分を自己負担することがネックになったのでは」と話している。
農林水産省の「農林業センサス」によると、15年の耕作放棄地は全国で計約42万3千ヘクタールと過去最大を更新、富山県とほぼ同じ面積になっている。福岡市の耕作放棄地は15年度末で約394ヘクタール。10年度末の約482ヘクタールに比べ減少しているが、非農地と判断された土地が増えたことが主な要因という。