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【SMAP解散に学ぶ組織論】(下) 「権威」の使い方 亀裂も結束も生む“諸刃の武器”

2016年12月21日 03時00分 更新

記者:金子浩明氏



  • 金子浩明(かねこ・ひろあき)グロービス経営大学院 シニア・ファカルティ・ディレクター、教員
     東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科 修士課程修了。コンサルティング会社で組織風土改革、人事制度の構築、官公庁関連のプロジェクトなどを担当。グロービス入社後は、コーポレート・エデュケーション部門のディレクターとして組織開発のコンサルティングに従事。現在はグロービス経営大学院 シニア・ファカルティー・ディレクターとして、企業研究、教材開発、教員育成などを行う。企業への新規事業立案・新製品開発のアドバイザーとしても活動する。2015年度から、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)プログラムマネージャー(PM)育成・活躍推進プログラムのメンター



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 SMAPの独立・解散報道では、ジャニー氏やメリー氏など事務所幹部の名前がメディアにたくさん登場した。多くの視聴者は、彼らがすごい権威を持つ人だと思ったことだろう。今回は、組織における「権威」をテーマとし、SMAP解散から読み解く組織論の最終回としたい。

 権威とは、どういう過程で成立するのか。バーナードは「権威受容説」を唱えている。つまり、権威は、権威者が一方的に受容者に強制するものではなく、むしろ逆に、受容者が受け入れた時に初めて成り立つ、という考えである。(権威と権力は異なる。権力とは何かを強制できる権限のこと)

 今年1月。SMAPのメンバーがジャニーズ事務所を退社し「独立する方向で協議」と各紙で報道された。それによると、キムタクだけが反対に回ったという。

 ただ、結局、独立は不可能な状況となり、残るメンバー4人は事務所幹部に謝罪するに至った。その場を取り持ったのはキムタク。メンバー自ら生放送のテレビ番組で説明したのは記憶に新しい。

 この後、事務所幹部はキムタクにリーダーとしての権威を与え、その権威の下でSMAPがまとまることを期待したようだ。

 ところが、メンバーの間に入った亀裂は解消されなかったようだ。これは、キムタクに「権威が備わっていなかった」とみることもできるし、事務所幹部も、キムタク以外のメンバーには「権威が通用しなかった」とみることもできるだろう。

権威は「職位」と「リーダーシップ」

 では、権威の源泉とは何か。ひとつは「職位の権威」である。

 ジャニー氏やメリー氏は、事務所内で最も職位が高いので、この点は十分クリアしていると言えよう。

 もう一つは、「リーダーシップの権威」である。

 明らかに、人よりも優れた能力を持っている人は、職位とは関係なくリーダーシップの権威を持つ。

 SMAP内においては、マネジャーのI氏を除くと年長者の中居君とキムタクの2人がその権威を持っていたようだ。

 しかし、独立騒動でリーダーシップの権威は一気に中居君に集中したようだ。事務所がいくら「キムタクを中心にまとまりなさい」と言ったとしても、メンバーがそれを受容しなければ権威は成立しないのである。

 もう一つ、権威の働きには重要な側面がある。

 バーナードによると、権威の命令を受容されるのは、その内容が受容者の「無関心圏(個人のこだわりがないゾーン)」にある場合という。

 命令には三つの反応が考えられる。
 
 (1)絶対に拒否する
 (2)迷う
 (3)すんなり受け入れる

 仮に命令が「無関心圏」にあれば、受容者は受け入れるだろう。もちろん、無関心圏の広さは個人によって異なるため、同じ命令でも、皆が同様に受け入れるとは限らない。

 SMAPのメンバーに対し、ジャニーズ事務所幹部の権威が通じなかったとしたら、それは、I氏退社後、幹部による介入が、彼らにとって「無関心圏」の出来事ではなかったからである。

組織と組織の階層性

 独立騒動の時に話を戻そう。SMAPという組織の視点からとらえると、一人だけ独立に反対したことで、組織の和を乱したのはキムタクにみえる。

 しかし、上位システムであるジャニーズ事務所の視点からとらえると、見方は異なる。むしろ、組織を守ろうとしたのは、キムタクである。

 「たいていの公式組織は、より大きな組織システムの中に含まれる部分システムである」(バーナード)

 SMAPという組織の上位階層には、ジャニーズ事務所がある。さらにその上には業界団体などがある。その意味で、SMAPはジャニーズ事務所の部分システムといえるだろう。

「組織人格」と「個人人格」

 「組織の全ての参加者は組織人格と個人人格を持つ」(バーナード)

 これに対応して、組織と個人を動かすものは、「組織の共通目的」と「個人の動機」に区別される。

 そして、利己的動機を持つ個人が組織に貢献しようとするのは、組織が個人に十分な「誘因」を与えるからだ、とされる。

 独立騒動の際、キムタクはジャニーズ事務所の「組織人格」でSMAPの独立を防ごうとした。

 だが、ジャニーズからすれば、残りのメンバーはジャニーズとしての「組織人格」ではなく「個人人格」で行動したように見える。

 組織とは、構成メンバーとなる「ヒト」を対象にしないことは【SMAP解散に学ぶ組織論(上)】で記した。しかし、メンバー5人のうち4人が離脱しようとすれば、もはや、ジャニーズ事務所にとっては、SMAPという部分システムが事務所の意向に反し、「組織人格」として行動しようとしたと映ることだろう。

 こうしたズレが起きた理由は、【SMAP解散に学ぶ組織論(中)】で記したように、ジャニーズ事務所と、SMAPという組織の維持に重要な鍵を握る管理者(マネジャーI氏)との関係が崩れていたためだ。

 最終的に、「解散」という道を事務所が認めたのは、部分システムとしてのSMAPの影響力がこれ以上大きくなることを望まなかった、ともみることもできよう。

 結果として、メンバーには亀裂が入ったとされる。キムタクが“不運”だったのは、彼にとってジャニーズ事務所という組織は、彼が「貢献したい」と思うだけの誘因を提供してくれる存在だったということだ。

 だから、キムタクがメンバー4人と行動を共にしなかったことを非難するのは筋違いだ。彼にとっては、当然の行動だったのだから。

 こうして組織論の観点からSMAP解散を分析してみると、一概に「誰が悪者で、誰が被害者なのか」ということは言えないことに気づく。

 権威は、組織を結束もさせ、亀裂も生む“諸刃の武器”といえる。どちらへ進むのか。その鍵を握るのは、権威が受容されるかどうかにかかっている。(おわり)













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