qBiz 西日本新聞経済電子版
ログイン

細くて着やすいスーツは? 腹のぜい肉隠せるか 天神でいざ試着

記者:三重野諭
福岡スタイル

スーツを着た記者。(左から)10年以上前に買った自前スーツ、洋服の青山「MODA RITORNO」、スーツセレクト「ブラックライン スリムテーパード」

洋服の青山・神野店長(左)とスーツセレクト・深田部長にそれぞれ着てもらった、ワンランク上のおすすめ商品

 シュッとしたサラリーマンになりたい−。自らの願望を満たすため、「そのスーツ、どこで買ったと?」と福岡市の中心部・天神で聞いてみた(前編はこちら)。不審人物扱いされながら集めた貴重な意見。その共通項は「細身で着やすい」「3万〜4万円で買える1着」だった。そんな商品ありますか? 街で名前の挙がった店舗に、いざ突撃。

 1店舗目は「洋服の青山 天神総本店」。福岡ソフトバンクホークスに球団公式スーツを提供している業界大手。総本店の名が付く大型店だけに、九州一円から来客があるそうだ。「やはり天神は感度の高いお客様が多い。仕立ての良いファッション性の高いもの、輸入生地も人気」と神野成店長(40)。ベスト付きのスリーピースの要望も多いという。

 「細身で着やすい、3万〜4万円のおすすめは」。指定されたのは、同店オリジナルブランドの「MODA RITORNO」の3万9千円(税抜き)。いわゆるモード系の細身のスーツで、黒系のブラウンという落ち着いた色だ。

 ジャケットを羽織ってみると、肩周りが動かしやすい。横方向にストレッチが利いている。「ストレッチスーツはどこでも扱っていますが、うちのこだわりは復元力です」。伸びっぱなしにならないため、型崩れがしにくく長期間着られるという。

■秘訣はあるが魔法はない

 鏡で見ると、本当にスリムに見える。「ラペル(下襟)と、ポケットのフラップの幅をやや細くしています。この二つが細いと締まった印象でカジュアルに、太いとドレッシーに見えます」。腕もだんだん細くなる作りで、シャープに見せているという。なるほど、着やすさをキープしつつ、細く見せる秘訣(ひけつ)はそんなところにあるのか。10年以上社会人やってて、全然知らなかった。

 「色、柄も落ち着いているし、十分ビジネス用途になるモデルです。着丈が短いのも今風ですね」。パンツも試着してみよう。あ、大事なことを聞くのを忘れていた。

 「どんどん腹回りが出てきたのですが、隠せますかね?」

 しばしの沈黙が流れる。

 「隠すとなると、細すぎないシルエットにするしかないですね。サイズを大きくするとか、ジャケットの絞りをゆったり目にするとか…」

 つまり、細いのを着ると、隠しようがないということらしい。やっぱり魔法はないのか。助言を受け、パンツは1サイズ大きいものにした。隠せているだろうか。写真を見てご判断を。

 続いて、「スーツセレクト 天神」へ。フタタとコナカが全国展開する、若者向けブランドの全国1号店だ。応対してくれたのは、フタタでスーツセレクトの担当部長、深田和彦さん(46)。

 街頭で「おしゃれすぎて入りづらい」との声も聞かれた店舗。深田部長に伝えると「『高いスーツの店だと思っていました』と今でも言われます。チラシやテレビでの宣伝を控える代わりに、店の外観や内装のイメージにこだわっています」。

 同店のスーツは、1万8千円と2万8千円(いずれも税抜き)、二つの価格帯がメーン。細身をリクエストして、出てきたのは「ブラックライン」。時々のトレンドを反映した、スリムでシャープなシルエットで、売れ筋という。

 深田部長は2007年、1号店オープン時の店長だった。「当時としても細めのモデルを販売していたのですが、『よりタイトなものを』という声がだんだん高まりました。肩幅、腰回り、もも回り。私たちの想像以上に、当時の若い方の骨格がきゃしゃだったんですね。そこで7年前に『ブラックライン スキニー』を発売しました。肩幅も袖もパンツもシャープですが、ストレッチは効いているので動きやすいですよ」

■第1ボタンでくびれを強調

 細いのは確かにかっこいいけれども、やっぱり腹回りが気になる。隠す方法を尋ねると、「難しい質問ですね、うーん。キツキツだとかえってぜい肉が目立つので、シルエットにこだわらず、体形にあったものが一番いいですね」。

 それでも細身を楽しみたいと無茶振りすると、渡されたのは「ブラックライン スリムテーパード」(税抜き2万8千円)の濃紺。狙いはリピーターだ。年月とともに体形がふくよかになっても、細いモデルをいつまでも着たい−。そんな要望に応え、30代になっても40代になっても着られる商品という。

 「スキニー」からの変更点は、肩パッドを抜いたり、パンツをだんだん細くしたりしている点。お尻回りはゆるやかで、肩も動かしやすいが、十分細く見える。気づかない工夫は他にも。第1ボタンの位置が高くなっている。「男性はどうしてもお腹の下の方が出てきやすいので、細さが残っている部分でくびれを強調するようにしています」

 街頭では、色や柄に関するこだわりの声は皆無だった。両店にも聞いてみた。「20年近くこの仕事をしていますが、黒や紺、ストライプなど、昔からあるものばかり。2年前ぐらいから明るめの紺が出てきているぐらいで、ビジネスの場の許容は広がっていない」(神野店長)。深田部長も「色柄は控えめ、ベーシックできちんとした印象のものが人気ですね。ネイビーが一番売れています。入学や就活など、人生最初のスーツが黒という人が多いのも影響しているかもしれません」

 もう一つ、どちらにも聞きたい質問があった。路上で聞いた大学院生(23)の声。「今は親が買ってくれたリクルートスーツなので、こだわりはないです。でも、働きだしたら、結婚式とかに着ていける良いスーツを。イタリア製とか、きちんとしたものを買いたいです」。スーツに無頓着な記者に刺さった、素敵な願望だった。

 ということで、ワンランク上の商品も教えてもらった。

 スーツセレクト・深田部長のおすすめは「シルバーライン クラシコテーパード」。3万8千円(税抜き)、実は予算内に収まる価格だった。ニュージーランド産ウール100%の商品。

 「世界のウールの約8割はオーストラリア産ですが、ニュージーランド産はより細くて長いのが特徴。生地はなめらかで着心地がいいうえに、染める前のベースがより白いので、発色も良いです」

 洋服の青山・神野店長が選んだのは「PERSON’S」の6万3千円(税抜き)。妻に相談して許可がもらえれば、私でも何とか手が出る価格だ。柔らかさと発色の良さを兼ね備えたイタリア製の生地。着丈がやや長め、ラペルもやや広めになっており、高級感がある。

 「合わせるネクタイの幅も広くするとエレガントになります」。着心地も着映えもいいという。

 「紳士服はデリケートな面もあります。良い生地のスーツは連日着用を避けて、重要な商談など、大事な場面で着ていただくと、長期間愛用できますよ」(神野店長)。内勤でもスーツを着ると気合いが入る、という街の声もあったが、ワンランク上のスーツはまさにここぞという時の“勝負服”になりそうだ。

 試着を繰り返し、話を聞いてるだけでスーツが買いたくなってきた。福岡で就職する方、転勤でいらっしゃる方にもぜひ、スーツライフを楽しんでいただきたい。



Recommend

ランキング(週間)

Recommend