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「よそ者」支援員を新町長が解雇 熊本・多良木町、集落再生に幕

記者:郷達也

槻木小前で活動を振り返る集落支援員の上治英人さん=熊本県多良木町槻木

 熊本県多良木町が少子高齢化と人口減からの脱却を目指し、県外の子育て世帯を招き入れた槻木(つきぎ)地区再生事業が行き詰まった。福岡県春日市から移り住んだ集落支援員上治(うえじ)英人さん(44)は、町長交代に伴う事業縮小を理由に、7月に辞任し町を離れる。事実上、町が“解雇”する形だ。事業の柱として町が再開させた槻木小も娘2人の転校に伴い、再び休校となる。人口約120人、高齢化率約8割。地域再生モデルとして注目された試みは、なぜ頓挫したのか−。

 費用対効果が「壁」

 「上治さんが辞めたら、私はどこにも行けんごとなる。どぎゃんなっとですか」。槻木地区の中村イツ子さん(88)は、上治さんが運転する車中で不安を訴えた。上治さんも「私も残念かです」と答えた。

 槻木に住み続けたい−。熊本大と町の全世帯調査で約9割がこう回答したのを受け、2013年に事業は始動。同9月、支援員となった上治さんは高齢者を診療所や商店に車で送迎したり、地元野菜を福岡市で出張販売したりしてきた。14年には長女の入学に伴い槻木小が7年ぶりに再開。住民は学校行事に足を運び、にぎわいが戻った。国内外のメディアも取材に来た。

 しかし、今年2月の町長選で状況は一変。町議時代から事業に批判的だった吉瀬浩一郎氏が事業縮小を公約に掲げて推進派の前町長を破り、初当選した。

 町は人口約1万人、槻木の人口はうち1%。その再生事業費は約2140万円(13〜16年度)に上った。全校児童が上治さんの娘2人だけの槻木小の運営管理費も年約800万円。吉瀬氏は「槻木小の児童1人当たりの教育予算は、町内の他の小学校の数十倍かかる」などと費用対効果への疑念を主張してきた。上治さん世帯のほか子育て世帯は増えず「槻木だけ振興策が手厚い」と町民の不満もじわじわと広がった。

 吉瀬町長は4月、「同等の仕事と比べて給料が高過ぎる」として上治さんの給料を1割削減。5年の区切りとなる18年9月以降は、槻木出身者に支援員を交代させる方針を示していた。

 町の施策として招いた支援員へ“解雇宣告”は妥当なのか−。吉瀬町長は「あまりに壮大な実験だった」とするが、事業の客観的な検証や評価はなされていない。ある町職員は「町が追い出すような形は避けたかった」と声を潜める。町は今後も槻木を支援し、和紙作りや山菜販売などの産業振興策は継続するという。



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