qBiz 西日本新聞経済電子版
ログイン

「空車」なのに止められない路上駐輪場 鍵だけ持ち去りが頻発 福岡市天神 いたずら?場所取り?

記者:森下公貴、前田倫之

鍵付きチェーン式の路上駐輪場。100円を投入してワイヤを掛け、鍵を回して抜くと固定される=12日、福岡市・天神

 「空いててラッキーと思ったら使えなかった。どういうこと?」。福岡市・天神の市役所で待ち合わせた男性が首をひねった。ほぼ満車に近い路上駐輪場に空車レーンを見つけたが、自転車を止められなかったという。現場に向かうと、自転車がないのに駐輪機のワイヤがロックされ、解除するための鍵がない。周辺を含めて30台分以上のレーンで鍵だけが持ち去られていた。単なるいたずらか、何か意図があるのか。路上駐輪場の謎を追った。

 「利用者も、私たちも困っているんです」。管轄する福岡市自転車課。前田利家課長の口から嘆き節が漏れた。意味不明の鍵の持ち去りは昨年3月以降、毎日のように起き、修理に追われているという。

 天神地区には約1800台分の市営路上駐輪場がある。鍵が持ち去られているのは昨年1〜3月に設置した504台分の「鍵付きワイヤ式」。100円を入れると鍵が抜け、ワイヤで駐輪機に自転車を固定することができる。

 同課によると、鍵がなく自転車を駐輪機につなげないレーンに自転車が置かれていることはほぼなく、犯人の手掛かりはない。鍵の交換費は1台500円。利用再開まで約2週間かかるという。

 前払いの鍵付きワイヤ式を導入した背景には、市の苦い経験がある。

 放置自転車の取り締まりを強化した2014年度以降、後払い式の駐輪場で100円を払って他人の自転車の施錠を解き、自分の自転車と入れ替える手口が横行。入れ替えられた自転車は放置とみなされ、「撤去された」との抗議は多い月で10件に上った。

 そこで約4千万円をかけて設置したのが前払い式だった。鍵ではなく暗証番号で開閉する最新型もあるが、1台当たり25万円と改修費が高額になるため導入を見送った。

   ■    ■

 改修後、ルールを守った自転車が撤去されることはなくなった。しかし「鍵がしょっちゅうなくなってみんな迷惑している。改修前の方がまだよかった」という街頭指導員もいる。

 なぜ鍵だけを持ち去るのか。まず浮かぶのは単純ないたずらだが、市役所近くに駐輪していた司法書士の男性(34)は「鍵を手に入れるために100円払う人はそういないのでは」。

 可能性はもう一つ。同課は「目撃したわけではありませんが」と前置きした上で、「自転車を止めずにとりあえず100円を払い、他人が使えないようにして、自分の都合のいい時間に使おうとしているのでは」という。ただ、市の委託事業者は毎朝の巡回で、鍵のないレーンを使用禁止にしている。

 では、ほかにどんな理由が−。取材中、前田課長と考え込んだが、答えは結局出なかった。

 市は監視カメラの設置も検討中。その前に不届き者を突き止めようと今月12日朝、被害が多い新天町の路上駐輪場に張り込んでみた。寒風の中、3時間待ったが、犯人は現れなかった。



Recommend

ランキング(週間)

Recommend