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サルとがっぷりの日々 高崎山管理公社 二宮 惇さん(23) 20年ぶりの新人ガイド

記者:長美咲

1月開票の人気投票「総選挙」で敗れ、「総選挙負けました」というたすきを掛けて寄せ場に立つ

 野生ニホンザルを間近に見られ、大分の観光名所となっている「高崎山自然動物園」(大分市)。二宮惇さん(23)は昨年9月、20年ぶりの新人正職員として、園を管理する高崎山管理公社に採用された。

 物心がついたときから動物が好きだった。別府市の自宅から近い同園やアフリカンサファリ(宇佐市)はもちろん、県外の動物園にも家族とよく足を運んだ。自宅ではペットの犬と暮らす中で、動物は日に日に身近な存在になっていった。

 大学は薬学部に進学した。「就職先が多いだろう」と、将来の安定を考えてのことだった。しかし、学んでみて自分のやりたいこととは違うと気付き、昨年3月に退学。好きなことを仕事にしたいと考え、動物と長い付き合いができる職を探す中で見つけたのが同園の臨時職員募集の求人だった。

 4月に採用され、まずは警備業務に当たった。園内の巡回やサル山下の国道に出ていきそうなサルを出入り口で追い込むなど、それぞれのサルと向き合う仕事ではなかったが、園への愛着は深まっていた。そんなときに聞いたのが正職員募集の知らせ。「これからも園で働きたい」。迷わず応募し、11人の応募者の中からたった1枠の合格をつかみ取った。

 9月から正職員となり、配属されたのは「楽猿(らくえん)案内担当」。代表的な仕事は寄せ場でのガイドだ。8月下旬に何度か先輩と一緒に練習をしたが、いざ一人でマイクを握ると、緊張と知識不足で言葉が続かなかった。最初は40人ほどいたお客さんが気付けば2、3人になっていたことも。「あれは地獄でした」。思い出すと悔しさとともに苦笑いがこぼれる。

 「このままじゃいけない」。そう思って始めたのがサルの地道な観察だ。自分で撮ったサルの顔写真と園の名簿を照らし合わせて名前を覚え、性格や「元恋人」など他のサルとの関係性をノートにまとめた。少しずつ「ネタ」が増え、最初は5分ほどしか続かなかったガイドの時間は少しずつ長くなった。

 11月には、園の恒例行事となった人気投票に自分が出馬することが決まった。スタッフ歴23年目のベテラン、江川順子さん(42)との一騎打ち。結果は完敗だったが、選挙期間を通して聞き手が楽しめるガイドをしようと意識するようになった。「おもしろかったよ」と声を掛けられるようになったことは何よりもうれしかった。

 「サルと会うだけではなく、ガイドを聞いて楽しんでもらってこその高崎山だと思っています」。採用から間もないが、自分の仕事への責任を強く意識する。「もっと勉強して、自分も高崎山を盛り上げる力になりたいです」。個性豊かなサルたちと、経験豊富なスタッフに囲まれて、今日も寄せ場でお客さんの笑顔を糧にマイクを握る。



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