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趙さんの瀋陽来信(1) 変わり続ける街 桃の花が満開になるとき

記者:チョウ・イーリン氏

趙 ●琳(チョウ・イーリン)氏
1979年中国・瀋陽生まれ。大学卒業後の2002年に来日し、2008年に東工大院社会理工学研究科を修了。博士(学術)。現在は、富士通総研経済研究所の上級研究員。好きな言葉は、老子の言葉「千里之行、始于足下」(千里の道も一歩から)。趣味は、休日に家族と気軽におしゃべりをしながらの山登り。
※●は「偉」のにんべんが「王」へん

瀋陽の中心部、故宮にも近い繁華街。若者の姿も多く、いつも賑やかだ

瀋陽の南部に位置する「渾南新区」。開発がどんどん進んでいる

 ♪あの桃の花が 満開のところ 私の可愛い故郷があり――♪

 1980年代、中国・遼寧省の景色を描き、春先を謳歌する歌「あの桃の花が満開のところ(中国語名:在那桃花盛開的地方)」が作られた。有名な中国人歌手の蒋大為(しょう・だいい)さんが1984年、テレビの特番で歌って以来、国民に愛される歌になったのだ。

 ちょうど今、遼寧省の省都・瀋陽では、春を感じる桃の花が満開だ。東京に住む私は、サクラの花を桃の花と錯覚し、故郷であるその街を思い浮かべることが度々ある。

◆   ◆   ◆

 ――ここは瀋陽。Shenyang。

 中国の東北部に位置し、北海道・函館とほぼ同じ緯度にある。冬が長いこの街には現在、約830万人が暮らす。九州との間にもいくつもゆかりがあり、例えば2013年には長崎県佐世保市と「友好交流都市」を締結した。

 東北部の中心都市である瀋陽は「歴史ある都市」としても知られている。

 清王朝最初の拠点で、かつての名前は「盛京」だった。瀋陽の東部には、清朝の初代皇帝である「ヌルハチの御墓」に世界文化遺産として登録されている「清福陵」がある。

 市の中心部には、清時代初期の皇居として建てられた「故宮」もある。瀋陽の故宮は北京故宮の約10分の1ほどの規模だが、それでも広さはヤフオクドームに近い6万平方メートル。清が北京に遷都した後、離宮として使われていた。

 振り返ってみると、1949年の中国建国直後の計画経済時代、遼寧省は東北地域の豊富な工業資源を生かした「重厚長大産業」の発展のもとで、経済状況が良好だった。同省は「共和国の長男」とも呼ばれていた。

 その「長男」の省都として栄えた瀋陽だったが、1978年、市場経済を取り入れる「改革・開放」以降、沿海地域に取り残されるように発展が遅れた。近年、政府は「東北旧工業基地の振興」を掲げて挽回を期しているが、産業構造の転換などには時間がかかりそうだ。

◆   ◆   ◆

 「なんだか、変わってしまったなぁ…」

 瀋陽に帰るたびに、なぜか心が少し痛む。この街は今、劇的な「変ぼう」を遂げようとしているのだ。




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