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【あなたの特命取材班】訪日客向け白タク、福岡の実態は 違法、割高でも言葉の安心感

記者:金沢皓介、坂本信博、山下真

福岡空港国際線旅客ターミナル近くに止めた白ナンバーのワゴン車に荷物を積み込む外国人客。記者の問い掛けに「トモダチ」と繰り返した=福岡市博多区

 訪日外国人が昨年には2800万人を突破する中、東京や関西で外国人観光客向けの「白タク」(無許可タクシー)が問題になっている。「福岡空港近くにもたくさんいる。違法行為が公然と繰り返されている」と特命取材班に情報が寄せられた。福岡空港や博多港からの昨年の入国者はアジア圏を中心に約300万人。外国人向け白タクの実態を探った。

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 取材班は福岡市の福岡空港国際線旅客ターミナル前で4日間、張り込んだ。中国、韓国便の到着が近づくと、ホテルやゴルフ場の送迎車に交じり、無地のワゴン車がちらほら。いずれもナンバープレートは業務用の緑ではなく自家用の白だ。

 そのうちの1台に目が止まった。白いプレートに記されているのはレンタカーを示す「わ」。間もなくガイド役の女性に連れられ、トランクを引いた外国人の団体客が近づき、次々と車に荷物を運び入れた。

 料金を取って客を乗せる自動車運送事業の経営は道路運送法に基づく国土交通大臣の許可が必要で、白タク行為はもちろん違法。怪しい動きが気になり声を掛けてみた。「それ、白タクじゃないですか」

 ガイド役の女性は片言の日本語で「違う、トモダチ」。「でもレンタカーですよね」と尋ねると「トモダチ乗せるため借りた」。女性は「トモダチ」一行を乗り込ませた上で、慌ただしく走り去っていった。

 近くにいた50代のバス運転手は「間違いなく白タクだよ」。客待ち中の60代タクシー運転手も「『トモダチ』は言い逃れの常とう句」と解説してくれた。

 今年に入り東京や関西地方では空港周辺や観光地で白タク行為をしていたとして、中国人の摘発が相次いでいる。九州運輸局によると、管内の摘発はまだないが同運輸局と福岡県警は、白タク排除に向けた啓発ビラを作成。駐福岡中国総領事館も2月、中国人旅行者向けに白タクを利用しないよう呼び掛けた。

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 九州運輸局などによると、白タクを利用する外国人客はスマートフォンのアプリを使って予約することが多いという。インターネット上には、外国人向けの配車アプリが複数あった。白タク営業に加担するわけではないが、実態調査のため、福岡市で運行する配車アプリであえて予約してみた。

 指定区間の移動のほか、1日かけて周遊するコースもあり、福岡市発着で北九州市の小倉城や九州鉄道記念館、門司港レトロなどを巡るコースは約2200元(約3万7800円)。今回は福岡市・天神から同市西区役所までを予約した。約10キロの料金は499元(約8500円)。事前にクレジットカードで決済すると、中国人運転手の名前や車のナンバーの通知があり、直接やりとりもできた。

 指定した日時に、天神のビル前に白ナンバーの黒い高級車が横付けされた。後部の自動ドアが開き「ニーハオ」と話し掛けてきた運転手は女性。車内はほこり一つ無く、座席は革張りだ。

 女性は中国籍の40代。日本人男性と結婚しており、運転の仕事は友人の紹介で始めたという。白タクの違法性は認識しており「警察に怒られた人も知っている」と声を落とした。アプリでの仕事は月1、2件程度で「大した収入にならない」。別の元運転手も、警察や運輸局などの取り締まりが強まり「割に合わなかった」と話した。

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 正規タクシーならば、同じ区間で約3500円。割高な白タクの利用が多い理由について女性運転手は「相場を知らない中国人は中国語を話せる安心感を選ぶ」と説明した。

 福岡市タクシー協会によると、2月時点で会員企業の運転手8651人のうち、中国語が話せると回答したのは10人。韓国語は13人、英語は35人だった。

 白タク行為は違法だ。ただ、2020年の東京五輪を控え、増え続ける外国人観光客とどう向き合うか。市観光産業課も「受け入れ環境の整備を進めていかないといけない」と対応を急ぐ考えを示した。



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