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「コピーではなくカバー」 探究心旺盛な福岡の親父バンド

記者:木村貴之
デスクコラム

(左)「GRAF ZEPPELIN Ⅱ」の田中健さん。素顔は地元の不動産会社で働くサラリーマンだが(右)ステージではロバート・プラントの歌唱法を探究するボーカリストに変わる(撮影・木村貴之)

木村貴之(きむら・たかゆき)
1994年から西日本新聞記者。趣味は釣りとエレキギターの手入れ。好きな映画は「椿三十郎」「八つ墓村」「ナチョ・リブレ」。音楽はレッド・ツェッペリン「貴方を愛しつづけて」、寺井尚子「ジャズ・ワルツ」、里見洋と一番星「新盛り場ブルース」


 今回の顔触れは他にエアロスミスやイーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンド、ジェフ・ベック、ブルース・ブラザース…。田中さんが参加を呼び掛けたのは「1975年までにレコードデビューしたバンドやギタリストをカバーする腕利きバンド」。米国の音楽史に残る69年の大規模野外コンサート「ウッドストック・フェスティバル」をイメージし、企画を練ったらしい。かなりマニアックだが、何となく分かる気がする。

 そんな彼が、カバーバンドによるステージの見どころを熱くこう語る。「どのバンドも表面的なコピーではなく、ブルースやカントリーなど影響を受けた音楽にもアプローチする。解釈を深めて練習すれば、曲は自分たちのものになり、オリジナルと違っても本物っぽくなる。落語家が江戸時代の古典を探究するのと同じ。だから『コピー』ではなく『カバー』。ツェッペリンのようにバンドが解散したり、ジミヘンのようにアーティストが夭逝したりして生の演奏に触れることができなくなっても、僕らの演奏でよみがえる」

 田中さんの熱弁に耳を傾けるうち、国語の教科書に登場した文芸評論の巨匠、小林秀雄の「模倣と独創」論に通じてくる。模倣は先人を敬い、その才能に迫る作業。これを重ねて独創性を育み、豊かな芸術を生む。芸術に限らず、ビジネスにも通じる理論と言えるが、田中さんはポリポリ頭をかきながら「いえいえ。単なる大人の遊びです」と笑う。

 今回、田中さんのバンドはホスト役として初日にトップバッター、2日目はトリを務めた。トリのステージでは、ブルース色の強い「貴方を愛しつづけて」、斬新なギターリフが色あせない「胸いっぱいの愛を」、そして名曲「天国への階段」…。カバーするのはスタジオ録音のアルバム音源ではなく、即興演奏が随所に入るライブ音源だ。力強く安定感のあるドラムやベースのリズムに絡むのは、本家ジミー・ペイジに迫るほど甘く、メロディアスなギター。そこに茶髪のロン毛でロバート・プラントに扮(ふん)した田中さんが、広い音域で話すように歌う。よく見ると、ロン毛メンバーの一人は明らかに「ヅラ」だが、そこは気にすまい。私も40年来のツェッペリンファン。鳥肌が立ち、思わず泣けた。

 ゲイツ・セブンに聞くと、福岡には一番人気のビートルズを含め数百ものカバーバンドが活動しているらしい。大半は50代前後のオヤジ世代とか。モチベーションはロックと出合って以来抱く憧れと熱狂といい、それが彼らの若々しさを保っているようだ。それは聴く側も同じ。ロックのカバーバンドに当たる光。その効果は広く、熱く注目されそうだ。



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