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熊本地震で建て替え中の病院も データ改ざん免震装置使用 九州にも動揺広がる

再建中の熊本市民病院に設置されたカヤバシステムマシナリー製の免震オイルダンパー(熊本市提供)

 油圧機器メーカーのKYBによる免震・制振装置のデータ改ざんは、情報提供の不足もあって全国の企業や地方自治体を疑心暗鬼に陥れている。不都合な数値を書き換えて顧客をだます行為は、2005年に発覚した耐震偽装事件や、15年のくい打ちデータ改ざん事件などで繰り返されてきたが、教訓は生かされなかった。九州では熊本地震から再建中の病院や福祉団体などが入る公共施設でも不適合な免震装置の設置確認などが相次ぎ、動揺が広がった。

 熊本市によると、2年前の熊本地震で被災し建て替え工事中の災害拠点病院「熊本市民病院」で、16基の免震装置の使用が判明。長崎市では災害拠点病院「長崎みなとメディカルセンター」の2棟に23基の免震装置、北九州市ではコンサート会場などを備え福祉団体事務所も入居する市の多目的施設「ウェルとばた」に42基の制振装置が使用されていたという。

 福岡市は、事務所の入るテナントビルやマンションなど民間施設15棟で、不適合装置の使用疑いがあると発表。佐賀県では、県医療センター好生館(佐賀市)と佐賀大医学部付属病院診療棟(同)に、不適合なオイルダンパーが使われている疑いがあることが明らかになった。

 福岡県嘉麻市と大分県宇佐市では、それぞれ建設している新庁舎に今後、免震装置を導入する予定だったという。

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熊本復興に水「許せぬ」

 「災害に強い病院を一日も早く再建しようとしているさなか、(不適合問題のある)装置が使われていたのは非常に残念だ」

 16年4月の熊本地震で被災した熊本市民病院(熊本市東区)。市の担当者は肩を落とす。市によると、17日朝、建設工事を請け負うゼネコンから連絡があり、不適合装置の設置が発覚したという。

 災害拠点施設でもある同病院は、熊本地震で全3棟のうち病棟2棟が使用不能になり、現在は規模を縮小し診療を行っている。新病院は鉄骨造り7階建てで病床数388床を備える。現病棟から約2キロ離れた場所に移転させる計画で、来秋予定の開業を心待ちにする患者も多い。

 市民病院で次女(4)が心臓手術などを受けてきた熊本市の向井美奈子さん(33)は「多くの患者が市民病院を使えず困っている。来秋の開院が遅れないか心配」と顔を曇らせる。市は今後、KYB側に装置の交換を含めて対応を求める方針だが、現在4階部分まで進んでいる工事への影響は不明だという。

 大西一史市長は「まさか、熊本地震で被災し災害に最も強い病院を目指しているのに免震ダンパーが不適合とは。被災自治体の長として怒りでいっぱいだ。報告を受けて手が震えた」と語気を強めた。

 長崎市の病院「長崎みなとメディカルセンター」でも不正のあった免震装置が確認された。運営する独立行政法人「長崎市立病院機構」の山下幸治総務課長は「国は『安全性に問題はない』としているが、不安はぬぐえない。早急な対応を求めたい」と話す。全ての交換をKYB側に要求する考えだが、その間も業務は続けるという。

 制振装置の不正が確認された北九州市戸畑区の多目的施設「ウェルとばた」には、市の児童相談所や福祉団体の事務所も入る。よく利用するという70代男性は「不正があった製品が全国に広がっているのは恐ろしい。ごまかし続けてきた姿勢には腹が立つし、情けない」と憤った。 (和田剛、丸野崇興、華山哲幸、諏訪部真)

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不要な係数使い改ざん

 KYBによる免震・制振装置のデータ改ざんは、本体の岐阜南工場(岐阜県可児市)から、子会社カヤバシステムマシナリー(東京)の工場(津市)に引き継がれていた。手口は、検査数値が基準を逸脱した場合に必要のない係数を掛け、合格の範囲内に修正するという計画的なものだった。

 03年から今年まで、8人の検査員が関わった。KYBは「検査員しか知らなかった」と主張するが、十数年にわたり周囲や上層部が察知できなかったのか。外部弁護士らの調査で新事実が判明する可能性もある。

 KYBが不正を続けていた間、元1級建築士による建物の構造計算書偽造や、東洋ゴム工業の免震偽装などの不正が明るみに出たが、KYBは自社のチェックに動かなかった。



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