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「35人学級」拡大どこまで 細やか指導⇔人件費増 請願に賛否入り交じる<11・18福岡市長選>

記者:小野浩志

 福岡市立のある小学校で6年生の担任をしている40代教諭のクラスには現在、児童が約40人いる。2年前に別の学校で受け持った6年の約30人の学級と比べ、学力向上やスムーズな人間関係構築のサポートのために、子どもたち一人一人に向き合う時間が足りない。

 「高学年になるほど、『35人以下学級』にしてきめ細かく寄り添う方が良いと思うのですが…」。児童の体格も大きくなってくるので教室内の通路幅も狭く、災害時の避難など安全面にも不安を覚えるという。

 国の法律は、小中学校は小1だけを35人以下学級とし、残りの学年は40人以下学級の編成としている。福岡市は独自に小1〜小4までを35人以下とし、中1は学校が35人以下にするかを選択できる仕組み。35人以下学級は2004年度以降、低学年から拡大してきたが、10年度の小4を最後に動きは止まっている。

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 市教育委員会が毎年、小学校長を対象にしているアンケートでは、35人以下学級について「授業でつまずく子どもが減ったと思う」との回答が100%になるなど肯定的な声が目立つ。

 本年度、市立小5、6年の1クラス当たり平均児童数は31・6人。市内には周辺部の児童の少ない学校もあるため、自然に35人を下回っている学校も多い。

 市教委の生活習慣・学習定着度調査などによると、小4、5ともに35人以下だった学校と、小5から40人以下に切り替わった学校との間には「国語と算数の平均正答率」「不登校やいじめの認知件数の生活面」のいずれでも数字上、明確な差はみられない。

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 8月下旬、市議会第2委員会で「小中全学年での35人以下学級の実施」を求める請願審査があった。署名は1万5千人を超え、共産党や市民クラブなど市議会の約3分の1が紹介議員に名を連ねた請願を出した市民団体の吉谷順子代表は「20年度から新学習指導要領が実施されることも見据え、多様な個性を持った子どもたちに教員がしっかり向き合えるよう導入を」と訴えた。

 ただ、それにはコストがかかる。市教委は、仮に本年度に小中全学年に拡大した場合、常勤講師など教員は193人の追加が必要となり、12億円超の人件費が発生すると答弁。施設面でも既存の空き教室活用と教室の増築を合わせ、小学90教室、中学103教室の追加(費用13億円超)になるとの試算を示した。請願への賛否は入り交じり、結局、継続審査となった。

 公教育を巡っては英語教育の拡充や部活動指導などを背景に、教員の過密労働問題も広く認識されるようになってきた。35人以下学級の拡大は、教員の負担を減らす意味で「働き方改革」につながる側面もある。

 市教委は現在、来年6月に策定する新しい「教育振興基本計画」の作業を急いでおり、35人以下の在り方についても「引き続き検討していく」としている。



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