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[元祖長浜屋]ラーメン「替え玉」伝説、ここにあり

記者:小川祥平

元祖長浜屋の厨房。丼をずらりと並べ「ナシカタ」「ベタカタ」などを作り分ける

元祖長浜屋
福岡市中央区長浜2の5の38。ラーメン500円、替え玉100円、替え肉100円。午前4時〜翌午前2時。年中無休(正月休みあり)。092(711)8154。

 入り口の引き戸を開けるなり、店員に好みを告げるのが、この店のシステムだ。「ナシカタ!」。店員は厨房(ちゅうぼう)に向かって繰り返す。「ナシカタ〜」

 福岡市中央区の長浜鮮魚市場横にある「元祖長浜屋」。メニューはラーメンしかなく、入店すると自動的に1杯が注文される。その際、客が「脂の量」と「麺の硬さ」の好みを伝える。ナシカタとは「脂なし、硬麺」の意味。ほかに「ベタカタ」(脂多め、硬麺)、「ナマ」(超硬麺)などがある。創業者、榊原松雄さん(故人)の次女で代表の山本和子さん(65)によると「お客さんに言われるままに対応していたら、いつの間にかこうなったんよ」だそうだ。

 ラーメンはうっすら白濁したスープ。細かく切られたチャーシューと大きめのネギが載っている。

 丼を持ち上げてスープを飲む。じわりと広がる豚骨のダシ。ほのかな酸味、ネギの辛味。チャーシューからしみ出した塩気もアクセントだ。硬さを残した細麺を一気にすすると、小麦の風味が鼻孔を突く。

 榊原さんは戦後間もない頃、名古屋の闇市で助けた台湾人からラーメンの作り方を学んだという。そんな店が「元祖」たるゆえん−。ひとつは「長浜」という全国有数のラーメンブランドの先駆けだったこと。もうひとつは「替え玉」の発祥地とされていることだ。

    □   □

 1952年、榊原さんと妻、きよ子さん(故人)は縁もゆかりもない博多に移り住み、屋台「清風軒」を始めた。当初は博多駅や中洲を流したが売れず、福岡市博多区にあった魚市場に目を付けた。

 55年、魚市場の移転とともに「清風軒」など周辺の屋台も長浜に。忙しい市場関係者のために早くゆでられるよう広まった細麺など独自の味から「長浜ラーメン」という呼称も生まれた。榊原さんが「元祖」を名乗ったのは店舗を構えた74年ごろだという。

 早朝から未明までにぎわう「元祖」には、飾り気がない店の魅力を物語るさまざまな伝説がある。いわく「来店時に客を1杯、2杯と数える」「灰皿をもらおうとしたら『床に捨てて』と言われた」「半替玉を頼んだら、1玉ゆでて半分捨てた」−。山本さんに尋ねると全部本当。ただし「今の若者は礼儀正しいからね。教えてないのに、ちゃんと『いらっしゃいませ』と言うからすごい」。

 替え玉は長浜に移転する前後に「麺だけお代わりできんと?」と客から言われた榊原さんが始めた。不惑が近づき、メタボも気になる記者だが「替え玉、硬で」と思わず注文。威勢のいい声が店内にこだました。「カタイタマ〜」



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