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敷居高い?「コンテンポラリーアート」近づくきっかけは 六本松の蔦屋書店で考えた

2017年09月29日 20時00分 更新

記者:福間慎一


  • 書棚に囲まれて展示されている作品

  • 田代敏朗さん

  • ドリッピングが特に印象的な田代さんの作品。実物は写真では表せないほど鮮やかだ

 「難しい」「なんだか高尚そう」…。コンテンポラリー(現代)アート、と聞いて二の足を踏む人は少なくない。

 福岡市中央区に開業した商業施設「六本松421」に入る蔦屋書店。店内に展示されているのが、丸くカットしたボードに鮮やかな色を乗せた作品だ。多彩な書籍の表紙に囲まれながら、ひときわ力強い色が視覚に訴えてきた。

 描いたのは佐賀県出身の画家、田代敏朗さん(37)。16歳の時、県展洋画の部で首席を受賞し注目された。以来、東京と福岡をメーンに活動。今夏は米国・ニューヨークでの展覧会で始めて作品が展示された。

 高校では美大進学を目指すコースで徹底的に学んだ田代さん。「アートは特別なもの、という意識を自分自身が強く持っていた」という。絵画での独立を目指し会社勤めの傍ら描き続けていたが、日常とアートの距離はなかなか縮まらなかった。

 考え方が変わったきっかけは2011年の東日本大震災。ボランティア活動で他の画家たちと岩手県に入り、倉庫に巨大な壁画を描く企画に参加した。完成した絵を見て、手を合わせて拝む人たちの姿に驚いた。そこに込められていたのは、亡くした家族や知人への思いだった。

 作品は必要とされることに意味がある――。田代さんはアートの「敷居」を取り除くことにした。始めたのは、B4ほどの大きさの作品を5000円で売り、作品の大きさに応じて金額を変えるというプロジェクト。大きさで値を変えるという一般的ではない手法だったが、3年間で700点超売れた。

 「安売りするなんて」という批判もあったという。だが田代さんは「浮世離れしていた自分を変えることができた」と意に介さない。2012年に独立、14年には菓子メーカー「ひよ子」の100周年を記念した新ブランド「DOUX D’AMOUR(ドゥー・ダムール)」に作品が採用された。

 全国に約1400店ある蔦屋書店の中で、書籍に触れながらアートを鑑賞できるスペースを持つ店舗は代官山と銀座(いずれも東京)、そして六本松だけだ。芸術鑑賞が目的ではない人が、偶然に作品に出会える仕掛けは、アートの敷居を下げたいという田代さんの思いに一致する。

 ここに展示されている32点はアクリル絵の具とペンキを用い、板に絵具を筆で飛び散らせる「ドリッピング」という手法と、ボーダーラインを組み合わせた作品たち。「ドリッピングもボーダーも、ともに『出尽くした』手法だけど、それを一つの場面で同時に表現した作品はなかった」。自由な発想が生んだ作品に、買い物客が思わず足を止める。

「日本ではまだまだ、『衣食住』とアートの間に大きな落差や距離がある。でも服を着替えるみたいに、季節で絵を替えてみてもいい」。田代さんはそう提案する。確かに、「アートは難しい」という先入観に、あまり意味はないのかもしれない。

自分も絵の「素人」です、と話す田代さんは呼び掛ける。「作者の名前ではなく、『この作品、なんかいいね』で選んでほしい」

◇  ◇
「六本松 蔦屋書店」での田代さんの展示「THE VERY END OF DAWN」は19日まで開催。

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