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「えっ…そんなことをやっていたんですか」と言われる日は、必ず来る

2017年12月17日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 現在は何台ものモニターに囲まれ、ウェブ向けの速報を担当する嘉悦洋さん


 「すみません、しばらく電話を貸していただけないでしょうか」

 締め切りまでに自分のオフィスに戻る時間はない。現場近くに確実な通信手段を確保して、オフィスにいる別の記者に、電話で原稿を吹き込む必要があるからだ。

 ほとんどの場合、家人は快諾してくれたという。すると若手記者の嘉悦さんは持参した西日本新聞社旗を玄関や庭木などに掲げる。「臨時通信部」の完成だ。

 つい、「えっ…そんなことをやっていたんですか」と聞き返してしまった。

 遅れてきた他社が「ちょっと使わせてくれ」と懇願しても、絶対に応じてはいけない。「ちょっと」のはずが1時間、2時間になり、自分たちが通話できなくなるからだ。作業終了後には、協力していただいた家に謝礼を支払い、重ねて感謝を伝えていたという。

 写真も送らなければならない。嘉悦さんは現地のタクシー会社に電話をかけ、迎車を要請。乗車するのは記者ではなく、フィルムだけ。運転手に託して、オフィスへ急行してもらっていた。

 「通常の取材でも、大量の10円玉が必需品。公衆電話の場所を確認しながら移動していた」と振り返る嘉悦さん。今なら携帯電話でいつでもデスクからの連絡を受けることができるが、当時は記者が会社に所在や行動を定時連絡。気の短いデスクだと、1時間に1回は電話をするよう求めてきたという。

 記事も、原稿用紙に鉛筆で手書きしていた。1985年ごろに発売されたワープロは20万円ほど。これは便利だと自費で購入して原稿を執筆していた嘉悦さんは昔気質のデスクに、怒鳴りつけられ、あ然としたという。

 「原稿は、紙に怒りと社会正義を込めて書くのだ!気迫と根性だ!1枚目をめくったら、2枚目に1枚目の文字の跡が写っているもんだ。なんだお前のその機械は。チャラチャラするな!」――それから1年とたたないうちに、ワープロは社内で正式に導入された。

 ちなみに嘉悦さんが購入した最初のワープロは、1行ずつしか画面に表示されなかった。次に買ったのは3行表示できた。売り文句は「三行革命」だったという。


西日本新聞社屋上で行われていた伝書バトの訓練
福間慎一(ふくま・しんいち)<br />
福岡市生まれ。2001年に西日本新聞社に入社、文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。紙面編集にも約4年間従事。16年9月から1年間、ヤフー株式会社に出向、17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。
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