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新年度早々の「ミス報告書」 修理代は30万円? 醤油屋今日談(7)

2018年04月06日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 洗った一升瓶をチェックしているところ。単純だが、速さと丁寧さのバランスが問われる作業の一つだ

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 ゴンッ!

 背筋に走る嫌な予感。どうやらドアの蝶番が少し歪んでいるようだ。確認のために扉を閉めと、もう片方の扉との間に10センチほどのすき間ができ、うまく閉まらない。やっちまった…。自暴自棄の落とし穴にすっぽりはまる。車をコツンとやった経験がある方なら、この感覚を分かってもらえるだろう。

 先日、工場内で商品の原料が入った80リットルサイズの桶2つを「ハンドリフト」という機械で動かしている時にヘマをした。隣の部屋に通じる扉を開けて通る際、荷の左側を扉の根本付近に当ててしまい、扉の枠が曲がってしまったのだ。

 スピードは十分に緩めていたが、荷の重さは100キロ超。想像以上の破壊力だった。

 以前にも、同じ扉で事故があったという。そのときは修理に30万円かかったらしい。左右は十分に確認したはずだったにのに、それなのに…。今回はいくらなのか、聞くのも怖い。

 ミスの原因は、機械操作の不慣れに尽きる。この時もそうだったが、うちの工場では一つの作業を3〜5人の流れ作業で行うことが多い。一連の作業を時間内に終わらせるには、全員が一定のペースで仕事をこなさなくてはならない。

 新人の自分は、直接指導されなくても、そばで先輩が手際よく作業をしているだけで、無言のプレッシャーを感じ、焦りからミスを犯してしまう。

 早く、正確に、美しくの三拍子がそろうのが理想だが、今はそのうちの一つでさえ難しいのが現実。あまりにできないので、自分自身に腹が立ってきて、さらに肩に力が入ってしまい、瓶を割ったり、醤油をこぼしたりすることもびたびだ。「早く一人前にならなくては」と思えば思うほど、ミスが増える気すらしている。

 醤油の充填や樽の洗浄など、毎日いろんな指示が降ってくる。共通しているのは段取りの大切さだ。本作業に入る前に、材料や道具をいかに手早くそろえるか。大きな道具を動かす際は、どのルートがスムーズかつ安全か。力作業なら、どうすれば骨を折らずにできるか――。

 現場では、あらゆる場面で考えながら動くことが求められる。一升瓶に栓をする単純な作業でさえ、それが数百本単位になると、道具の配置がスピードや効率に大きく関わり、トータルでは決定的な差が出る。

 そこでいつも悩ましいのが、「スピード」と「丁寧さ」のバランスだ。一般的に、急げば急ぐほど、作業は雑になる。お客さまの口に入るという商品の特性もあり、多少遅くなっても、丁寧な方がいい気がするが、うちの工場ではスピードの方が優先されている。本当にこれでいいのか、モヤモヤした気分になることも少なくない。

 仲のいい地元の飲食店の経営者に疑問をぶつけてみたら、その店も、丁寧さよりスピードを重視しているという。なぜ?

 「飲食で仕事を続けていくには、早さが第一。丁寧さは後からでも身に付くが、スピードはそうはいかない

 なるほど、納得。仕事とはそういうものなのだ。

 ということで、冒頭の事故の再発を防ぐには、スピードを緩めて回避するのではなく、スピードを保ちながらミスをしないように経験を積むしかないのかな、と感じた次第である。30万円(にならないことを祈る)は高すぎるが、いろいろと考える機会にはなった。

 えっと、なんだか、今回はミス報告書のようなコラムになり、大変恐縮です。新年度が始まりましたが、失敗を恐れず、自分に挑戦していきましょう!

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