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【あなたの特命取材班】「竹林管理限界」記事に反響 厄介な土地 私にも 税金、草刈り、相続の壁

2018年05月19日 03時00分 更新

記者:西田昌矢、金沢皓介、本山優紀


  • 崖の下にある佐田千栄子さん方。上には小笹団地が見える=福岡市中央区

 崖上の土地から竹が落ちてくるが、所有者の女性に管理する資力はなく、法的にも手放せない−。土地所有を巡る問題を報じた西日本新聞の記事(4日付朝刊)に多くの反響が寄せられている。利活用できない土地が“負の遺産”となり、苦悩する人が少なくない現状が見えてきた。

 4日の朝刊で取り上げた竹が落ちてくる土地の崖下に住む女性(67)は所有者の80代女性から区役所を通じて竹を切る許可を得た。女性は記事掲載後、竹林の伐採に着手。費用数十万円は女性側が手出しした。「余裕があるわけではないが、自分や近所の人がけがをしないでほしいという思いで決断した」と言う。土地所有者の女性は「皆さまに大変ご迷惑をおかけし、申し訳ない」と取材班に手紙を寄せた。記事が出た後、土地を引き取りたいとの申し出もあったという。「これで事態が動けばいいのですが」

      ■

 福岡県糸島市加布里の山崎誠さん(87)も利活用できない土地に悩む。約50年前、市内の土地約260平方メートルを知人から購入し、家を建てた。大雨が降ると、隣接する崖から雨水や泥が流れ出るため、やむなく20年前に家を取り壊した。今は年2万円の固定資産税や草刈りの負担がのしかかり、「土地が悩みの種になっている」と嘆く。

 土地管理の負担は世代を超えて受け継がれる。同県久留米市の60代男性は先祖代々の市内の土地約330平方メートルを約30年前に相続。管理費は年10万円以上かかるものの使い道はなく、もらい手は見つからない。

 「息子に相続させたくない」と話す男性だが、法の壁が立ちはだかる。NPO法人相続・遺言サポートセンター(福岡県)によると「相続の放棄は全部放棄が原則」。財産のうち一部を放棄することはできない。

 男性は「息子に資産を残してやりたいが、この土地も付いていってしまう。死ぬ前に手放せればいいが」と声を振り絞った。

   ◇   ◇

自宅裏は特別警戒区域 建て替えに制約、高コスト 所有の県公社、対策の予定なく

 「自宅裏に崖があり、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定され、建て替えもできない。諦めるしかないのか」。土地を巡る新たなSOSが特命取材班に届いた。梅雨入りを控え、大雨が心配な季節になる。現場に急行した。

 連絡をくれた福岡市中央区小笹4丁目の佐田千栄子さん(58)方の裏には高さ13メートルの崖があった。上には福岡県住宅供給公社が管理する小笹団地。崖は草や木で覆われ、もし地滑りをしたら危ないと感じた。実際に佐田さんが幼少だった50年ほど前、大雨で地滑りしたことがあったという。

 2016年夏、家を建て替えようと、ハウスメーカーに相談すると「危険地域で建て替えできない」と断られた。その時、自宅がゾーンに含まれていることを初めて知ったという。

 県砂防課によると、この地域は13年12月、土砂災害防止法に基づくレッドゾーンに指定。ゾーンは住宅のある土地と崖にまたがっている。指定の際に地域で説明会を開いたものの、個別の訪問などはしなかった。

 レッドゾーンに指定されると、開発行為や建物の建築が規制され、建て替えの場合も崖が崩れた際の衝撃に耐えられる構造が求められる。市建築審査課によると、佐田さん方の場合、高さ2・3メートルのコンクリートの壁でゾーンの範囲を覆うことなどが求められ、かなりコストがかかる。

 崖の所有者である同公社に聞くと「予算や緊急性などを総合的に判断し、現時点で工事の予定はない」。小笹団地は1950〜60年代に整備され、築約60年が経過。一部は建て替えが進むが、今回の区域は未定という。

 「熊本地震や九州豪雨など自然災害が続いている。もし何かあったらと思うと怖い。公的な機関が土地を持っているのだから何とかしてほしい」と佐田さん。レッドゾーンは福岡市内だけで1544カ所。こうしたケースは氷山の一角なのかもしれない。

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