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元記者ピロシの醤油屋今日談

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ラムネにまつわるエトセトラ 語源も歴史もユーモラス 醤油屋今日談(11)

2018年06月01日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 先週の川開き観光祭では、店頭でラムネを販売。レトロな雰囲気を出すため、敢えてモノクロ写真で

  • 工場で製造中のラムネ。ベルトコンベアの上を瓶が流れていく

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 いよいよ梅雨入り。夏本番も近い。季節感が乏しい醤油や味噌を扱うわが社にあって、この時季に「引く手あまた」なのがラムネである。

 先日もある百貨店でお中元のPRイベントに参加させてもらったが、毎年、ゴールデンウイーク過ぎから一気に注文が増えるらしい。わが社では、9種類の味や色が付いたラムネを「虹色ラムネ」という名称で販売している。

 そもそも「なぜ醤油屋でラムネを?」というご質問をお客さまからよくいただく。1899(明治32)年に創業した際、醤油や味噌だけでは、それらが完成するまでの2年間ほど売る物がないため、その間の「つなぎ」として製造を始めた、というのがその答えだ。

 そもそも、ラムネは、明治維新の前後に西洋から入ってきた「レモネード」がなまったのが語源だそうだ。創業者が商品としてラムネを選んだのは、当時の時代背景がある。1886(明治19)年、国内で疫病のコレラが流行し、多数の死者が出た。その際、新聞に「ガスを含有する飲料を用いると、恐るべきコレラ病に犯されることがない」との記事が掲載され、ラムネが一躍ヒット商品になり、全国に広まったというのだ。
日本清涼飲料検査協会のHPより

 ラムネが薬用とは眉唾な感じがするが、wikipediaで「コレラ」を引くとここにも「明治時代の日本では、ラムネが症状の緩和に用いられた」とある。今は薬として飲むことはまずないが、かつては患者の激しい脱水症状を抑えるために、海水を薄めて飲ませることもあったそうで、わらをもすがる思いで買い求めた人がいたことは大いにあり得る話。明治の人々の暮らしぶりが浮かんでくるような、わが社の秘話である。

 夏の風物詩であるラムネ。先週末、ここ日田市で行われた恒例の川開き観光祭で出した出店でも、大人から子どもまで多くの方にお買い上げいただいた。

 ただ、うちの専務によると、ラムネが最も売れるのは、実は最高気温が32度くらいまでだそうだ。日田市は夏場にたびたび全国一の最高気温を記録する猛暑の街だが、35度を超える日はアイスクリームやかき氷にお客さまを奪われてしまうらしい。

 カランカランと音がするガラス瓶の清涼感も、夏のイメージを演出していると思う。ラムネの中身は、サイダーとほぼ一緒。瓶あってのラムネなのだ。中のビー玉をくぼみに引っかけるとスムーズに飲める上、ひっくり返すと飲みかけでも栓ができる構造になっていて、よくできた商品だと感心させられる。

 この瓶も、かつては回収して中身を詰め直すのが一般的だったが、わが社では数年前からすべて使い捨てに切り替えている。衛生面の問題に加え、ビー玉できちんと栓ができない瓶が多く、生産効率が悪いためだ。

 実は、今使っているラムネ瓶とは個人的に不思議な巡り合わせがある。瓶のメーカーは福岡県田川市にあるのだが、新聞記者になりたてだった十数年前、真夏の灼熱の工場でその製造過程を取材させてもらったことがあるのだ。猛暑さえも涼しく感じられる現場、という切り口で記事を書いたと記憶している。まさか、その瓶を使う側になるとは…。

 これから夏にかけて、ラムネの製造がピークを迎える。名前の語源も日本で広まった時代背景も、どこかユーモラスだが、子どもから大人まで広く愛されている、不思議な飲み物だ。
 


※TVQで6月9日(土)午後2時半〜3時に放送予定の「ぐっ!ジョブ」で弊社の商品が取り上げられる予定です。乞うご期待!



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