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元記者ピロシの醤油屋今日談

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真剣勝負の試食イベント 3日間の苦闘の果てに見えたもの 醤油屋今日談(12)

2018年06月15日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 催事での試食提供に初挑戦。結果は…。福岡三越のデパ地下にて

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    川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 前回告知した通り、6月9日に福岡の民放の30分番組で弊社の商品が紹介された。放送に合わせ、福岡市内のデパート2か所で試食によるPRをさせてもらえることになり、デパ地下に3日間立ち続けた。今回は、その濃密な3日間を振り返りたい。

 そもそも、弊社にとって催事は「鬼門」らしい。醤油などの調味料は長期保管が前提のため、買ってもらえるのは基本的にストックを切らしたタイミングの前後に限られる。しかも、日本酒のように単価が高くないので、たくさん売らないと元が取れない。テレビ放送という追い風が吹いていた今回も、やはり苦戦した。

 社内で話し合った結果、おすすめ商品は、鶏肉と塩で作った液体発酵調味料に決まった。一部でご好評を得てはいたが、その珍しさもあり「何の料理に使えばいいか分からない」という声が多いため、試食を通して味や使い方を伝える作戦である。
 
 会社としても、試食を伴う催事は久しぶりで、私はもちろん初めて。準備は手探りだった。デパートの方からのアドバイスで、うちの商品と味塩こしょうで焼いた肉の食べ比べをしてもらうことになったが、どれくらいの量の肉を準備すればいいのか、さっぱり分からない。

 肉を焼くのが間に合わなくなるのでは。準備した肉を切らしたらどうしよう。PRまで手が回るのか。不安は募る一方だったが、現実はそんな予想から、さらにかけ離れていた。

 まず、肉が焼けても、見向きをしてくれるお客さまはほんの一部で、手にとってもらうだけでも一苦労。歩幅を緩めた方に「どうぞ」と差し出しても、「何これ?」と怪訝な顔をされることもしばしば。肉がなかなかはけないために、長く焼きすぎてカチカチになったもの提供しないように注意が必要だった。

 薄いスライス肉では限界があると思い、試しに厚みのある高級肉を投入してみたら、すぐに人の輪ができた。ありがたいが、主役が違う…。これでは何のPRか分からないし、採算も合わない。ようやく口に運んでもらえても、「塩がきつい」「味の違いが分からない」といった情け容赦のない感想もちらほら。肉を焼くのがこんなに難しいとは思わなかった。

 どうやればいいのか――。売り場に立って考え続けたが、妙案が浮かばないまま3日間が終わった。お肉代として2万円の予算を準備していたが、費やしたのは半分以下だった。

 反省点だらけの催事ではあったが、ほぼ初めての試みを大きなトラブルなく終えることができ、達成感を味わうことができたのも事実。売り場に足を運んでくれた友人・知人・先輩のほか、デパート側の方々に支えられたのもあるが、何より、自分たちで作った商品の味をお客さまに目の前で評価される機会を得たのが大きかった。

 厳しい意見やお叱りの声も多く頂いたが、それも真剣勝負をしたからこそ。会社や商品の長所や短所を肌で感じたことで、普段は見えていない自分の現在位置が確認できた気がした。肝心の収支面での成否はまだ判断がつかないが、確かな手応えもある。場数を踏めば、もう少しうまくやれるような気も…。

 さあ、2週間後には東京での催事が待っている。

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