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福岡の「細かすぎる音風景」 他の追随を許さない、圧倒的ローカルに学ぶ

2018年09月09日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • ウインドジャマー(風音よけ)を付けたレコーダー。福岡にはどんな音が流れているのか

  • 効果音フリー素材のページ。まさかの「福岡」のカテゴリに目が点になる

 初めて見たときは、ありふれたウェブページだと思った。

 「効果音フリー素材配信」と題して、さまざまな効果音を無料で提供しているサイトなのだが、正直に言うと地味だ。<食べ物><交通><打撃音>などにカテゴリ分けされた音源を、無償で聞いたり、使ったりできる。聞いてみると意外に楽しかったので、いくつか試聴していた。

 もちろん、単なる効果音がそんなに面白いわけではないし、同様のサイトは他にもある。しかしここには、目を疑う効果音のカテゴリがあった。

そのカテゴリとは<福岡>―――。初めて見たときは、衝撃を受けずにはいられなかった。

 音を提供しているのは福岡市の総合映像プロダクション「VSQ」。収録している福岡の効果音は現在95個もある。一覧を見ていると、<天神 地下街><能古島 渡船場>など興味深い。

 その中に、さらに目が点になるタイトルの「効果音」があった。

 <福重 田んぼ>――そこには、そう書いてあった。

 福岡市西区福重、そこは都心でも、大自然でもない、いわばフツーの場所である。その効果音とは…。恐る恐るクリックしてみると…聞こえてきた。遠くを走る車の排気音や、人の足跡、遠くには鳥のさえずり。確かに、「福重の田んぼ」である。しかしなんと前衛的な効果音だろう。

 一覧をよく見ると、「荒津石油コンビナート」「鳥飼八幡宮」など、ちょっと「音」を想像しがたい場所が列挙されている。

 誰が、なぜ。どうしても気になり、VSQに向かった。

◇◇◇

 迎えてくれたのは、VSQ編集部のスタッフ。副部長の大町龍平さんによると、配信サービスは2年ほど前に始めたという。最初は一般的な効果音だけを集めていたが、「ウチじゃないとできないものを」と考えるようになった。着想したのが、福岡の「音」だった。

 さすがプロ。どの音も、さすがにクリアに聞こえる。さぞ重厚な装備で収録に向かっているかと思いきや、サウンドデザイナーの前田博文さん(54)が「本業の合間を縫って」、1人ですべて収録しているというのだ。

 一日で録音する場所は、多くて10カ所に上ることも。場所選びは気の向くまま。番組制作では映像が優先され、どうしても「音」は後回しになることも少なくないとか。後から映像に付け加えられる素材を集める、という実用的な意味合いもある。

 それにしても、名島海岸と奈多海岸(ともに福岡市東区)の違いってあるのだろうか…。

 「波打ち際に砂利が多い名島と、目の細かい砂の奈多では、波音が微妙に違う」と前田さん。姪浜、荒津、唐泊と10カ所以上巡った漁港も「広さで汽笛の響き方が違う」という。

前田さんにレコーダーを構えて録音の様子を再現してもらった。周囲から見ると、「何かの調査」には見えるが、何をしているのかはわからないだろう
前田さんが働くPAルーム。そこに「自然」はない
福間慎一(ふくま・しんいち)<br />
福岡市生まれ、2001年入社。文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。1年間のヤフー出向を経て17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。
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