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【あなたの特命取材班】庭が陥没、原因は地下水路 元農業用 老朽化で壁壊れる 福岡市内に数千キロ

2018年10月02日 03時00分 更新

記者:四宮淳平


  • 陥没当時、管を埋め込んだ応急復旧工事(女性が自宅の2階から撮影)

  • 陥没の応急復旧工事が終わり、現在は舗装されている女性宅

  • 陥没した場所に、応急復旧工事で埋め込まれた管

 「家の庭が突然陥没した」。2年前にそんな異変が起きたと、福岡市城南区の女性(72)から特命取材班に連絡が入った。「庭」の下を走っている地下水路の壁が壊れたことが原因らしい。「再び陥没しないだろうか」と心配する女性。背景には、福岡市の足元で進むインフラ老朽化の問題があった。

 記者が現場を訪ねると、陥没した場所は既に真新しいアスファルトで黒光りしていた。

 女性が異変に気付いたのは2016年6月。アスファルトの庭の一角が割れて落ち込み始め、徐々に亀裂が拡大した。女性は翌朝、福岡市役所に電話。掘り返すと、土地の下には市管理の地下水路(高さ、横幅とも1・2メートル)があり、片側の壁が内側に倒れていた。陥没箇所は縦横約1〜2メートルに及んでいた。市は雨水の流れを確保するため、新たに管を埋め込む応急復旧工事を実施したという。民家への影響に対する補償については現在も交渉中だ。

 しかし、どうして公共の水路が、民間の敷地の下を通っているのか−。

 女性の自宅が建ったのは1970年代。この時、水路の両側の土地も購入したが、既に水路はふたで覆われていて、一体的な土地のように整備されていたという。道路沿いの数軒も、女性宅と同じように地下水路の上部が庭のように整備されている。

 市西部下水道課などによると、この水路はもともと一帯の農業用として使われ、国が管理していたが、機関委任事務の廃止で2005年に市に譲与されたという。自宅の庭のような形で水路が覆われている今回のようなケースは珍しく、「いつ誰が覆ったのか不明」(同課)という。

 用水路との因果関係は不明だが、女性宅の近所では6年前にも庭が陥没したほか、少しずつ土地が沈下している場所が現在もあるという。同課は「一帯の雨水の流れを勘案し、どの程度の水路が必要なのかを考えた上で改修の必要性などを検討する」と、数年単位で対応する構えだ。

   ◆    ◆

 国から譲与された水路は市内に数千キロあるという。地中、地上を問わず老朽化が進む中、巡回中の市職員や住民が異常を発見し、必要に応じて補修や改築をしている。コストの問題もあり、いわば「対症療法」でしのいでいる。

 これとは別に、市内には市などが整備した、汚水や雨水を流す下水管が16年度末時点で約7100キロある。し尿や生活雑排水を流すため、地中を走る下水管の劣化は比較的早く、設置から約30年で老朽化などの不具合が出てくる傾向がある。

 市は改築費として18年度に約54億円を計上。下水管の耐用年数が切れる時期のピークが2030年代になるため、管の状況を見ながら交換時期を前後にスライドして平準化させる計画を策定している。

 予算のうち、約2億円は調査費。毎年、約70キロの下水管を調査し、うち1〜2割が改築対象になるという。こうした老朽化が原因とみられる道路の陥没や沈下などは年に約200件に上っているのが現状だ。

 九州大大学院の田中孝男教授(行政法)は城南区の事案について「根本的な解決のためには、用水路の位置を道路の下に移設したり、水路を埋めたりする案が考えられる」とした上で「インフラの老朽化という問題は全国的に起きており、市は住民の不安を解消する責任がある」と指摘する。

      ◇

 読者からの調査依頼に記者が現場を踏んで応える「あなたの特命取材班」(あな特)。西日本新聞都市圏総局では会員制交流サイト(SNS)を通じ、あな特フォロワー(通信員)に呼び掛け、11月4日告示、18日投開票の福岡市長選で選ばれる次の市長に「言いたいこと、聞きたいこと」を募った。集まった情報などを参考に記者たちは現場に向かい、市政について考えた。「あなたの特命取材班@福岡市長選」として随時、掲載する。

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