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医療的ケア児の保育 モデル事業続く手探り 拡大へ人材確保が急務<11・18福岡市長選>

2018年11月05日 03時00分 更新

記者:前田倫之


  • 看護師にたんの吸引をしてもらう川島理太郎君

 「上手に出せたよ」。川島理太郎君(3)ののどに装着した呼吸補助器からたんを吸引し、女性看護師が語り掛けた。福岡市が本年度、日常的に医療行為の援助が必要な子ども(医療的ケア児)を受け入れるモデル事業を始めた市立千代保育所(博多区)。ケアが終わると、理太郎君は園児たちの輪へ駆け戻った。

 理太郎君は自力呼吸が困難な気管軟化症と診断され、1歳直前で気管切開した。たんが詰まると呼吸ができなくなる恐れがあり、就寝前や食事の前後に吸引が欠かせない。

 看護師をしていた母由美子さん(38)は復職を考える中、預け先を見つけるため、認可保育所など数十施設に問い合わせたが「前例がない」「看護師がいない」などと断られた。モデル事業を知ったのは今年4月。呼吸補助器の形状などを理由に一度は「落選」したが、条件を整えて再応募。8月からの入園が認められた。「自分の苦労を通り越し、胸いっぱいになった」。就職先も見つかった。

   ◇    ◇

 医療の発展で低出生体重児の救命率が高まり、全国的にケア児が増えている。モデル事業は、その支援を自治体の努力義務とした2016年の児童福祉法改正を踏まえ導入。市立保育所7カ所のうち、場所を確保しやすい千代保育所が選ばれた。1日8時間、週6日の受け入れ。看護師3人が交代でケアに当たる。

 厚生労働省の試算では15年度、19歳以下のケア児は全国で約1万7千人に上る。市が把握している市内の未就学のケア児は102人。加えて、障害はないが、ケアを必要とする子どもが一定数はいるとみられる。

 現在、千代保育所での受け入れ人数は2人。市内の私立の受け入れも1施設、1人にとどまっている。今後も増加が見込まれるケア児の保育ニーズ。対策が急務になっている。

   ◇    ◇

 保育現場での受け入れに対する不安を和らげようと、市は今月10日、千代保育所で保育士を対象にした講習会を開いた。市内から約40人が参加し、呼吸補助器具の仕組みやケア児と接する際の注意点などを学んだ。同保育所の高島さつき所長は「何もかも手探り」と現状を語る。

 課題は多い。一つはケアのために配置する看護師の確保。売り手市場で人材の奪い合いになる上、ケアに精通した人は限られてくる。保育士でも一部ケアができるようになる県認定の研修があるが、研修費は原則、個人や施設の負担。保育士自体が不足しており「研修で不在になった期間の穴埋めが難しい」(市子育て支援部)という面もある。

 一方で、全国では手厚い支援態勢を敷く自治体もある。堺市は18カ所ある公立の認定こども園のうちどこでも受け入れが可能で、ケア児が入った園に重点的に看護師を置く態勢を取っている。私立の保育所に看護師を配置した場合、1人当たり約25万円の人件費の補助が出る。川崎市は七つの区ごとに拠点保育所を設置し、ケア児専用のスペースを設けている。

 福岡市はケア児がいる家庭の実態調査を進め、まず市立施設への拡大を図り、民間にも受け入れを呼び掛けていく考えだ。市立心身障がい福祉センターの宮崎千明センター長は「看護師の人件費補助や研修制度、スペースの確保など、ソフトとハード両面から民間が受け入れやすい環境を整える必要がある」と指摘する。

■医療的ケア児 気管切開に伴うたんの吸引や胃ろうからの経管栄養、人工呼吸器の装着などの医療行為を日常的に必要とする子ども。親を除くと医師や看護師、一定の研修を受けたヘルパーや教員にしかケアは認められていない。かつては出産直後に命を落としていたケースでも、新生児集中治療室(NICU)で救命される子どもが増え、近年、増加している。厚生労働省の推計では2015年度、19歳以下の医療的ケア児は全国で約1万7千人に上り、05年度の約1・8倍となった。
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