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「問題空き家予備軍」増 放置が招く環境悪化 マンションにも課題<11・18福岡市長選>

2018年11月11日 03時00分 更新

記者:三重野諭


  • モップで床掃除をする空き家サポートサービスの作業員。契約者は徐々に増えているという

 福岡市城南区の静かな住宅街。平日の昼下がりに作業服姿の男性が一戸建てを訪れた。モップで床を拭く。蛇口をひねって水を流し、庭の草取りをする。1時間ほどの作業。三好不動産(同市)が空き家の所有者やその家族から依頼を受けたサポートサービスだ。

 担当者によると、2012年のサービス開始から利用件数は徐々に伸び、延べ44件。うち福岡市内が32件を占める。利用のきっかけは所有者の高齢者施設への入所や入院、相続など、高齢化に起因するケースが6割を占める。現在契約中の22件のうち、賃貸や売買に出されているのは1件のみ。「築30〜40年もざらにあるが、修繕すれば住める家がほとんど」と説明する。

   ◇    ◇   

 総務省の住宅・土地統計調査で、賃貸や売却の対象でなく、長期不在や解体予定となっている空き家は2013年時点で市内に2万480戸ある。中でも、壊れたり腐ったりした箇所がある「問題空き家の予備軍」が5690戸。いずれも08年からの5年間で15%前後増えている。

 福岡市が超高齢社会に突入する中、顕在化する空き家問題。地震や台風などによる倒壊の危険性、ネズミや猫などが住み着くことによる衛生状態の悪化、不審者の侵入、放火やごみの不法投棄−。その放置は地域問題を引き起こしかねない。

 「強風で車庫の屋根が飛びそう」「隣の家から木が伸びてきた」。空き家の隣人からの通報を受ける福岡市の建築物安全推進課は対応に追われ続けている。

 2015年に空き家対策特別措置法が全面施行し、倒壊などの恐れのある空き家を自治体が強制的に解体できるようになった。同課では家屋を解体した後に費用を所有者に負担させる行政代執行を初めて今年2件実施した。

 市独自の条例などに基づき、昨年度だけで101件の空き家の所有者に管理の改善を求める行政指導もしたが「対症療法しかできておらず、市民からの通報への対応に忙殺されているのが現状。根本解決は見えていない」(同課)。

   ◇    ◇   

 「空き家問題を放置すれば所有者が他界してねずみ算式に相続人が増え、処分するための意思決定が難しくなる。その間に物件の荒廃も進み、税金で解体せざるを得なくなる」。東洋大理工学部の野澤千絵教授(都市計画)は行政の手間と支出の増加を危ぶむ。

 福岡市では住宅の相続などに関する相談窓口を設けているが、野澤教授は相続のタイミングで売る、貸すといった対応を促すことが必要と強調。「不動産業者や司法書士と行政との連携強化を」と訴える。

 野澤教授によると、福岡市のような都市部で将来的に問題となりそうなのが老朽化した分譲マンションだ。修繕や解体、建て替えに所有者でつくる管理組合での合意形成が必要になるためハードルが高いほか、修繕積立金の不足や所有者の高齢化・相続放棄なども懸念されるためだ。

 古くなり、住民のいなくなった“ゴーストマンション”がもたらす地域イメージや治安の悪化、倒壊の危険は一戸建ての比ではない。市はマンション管理士の派遣や管理規約の診断など、管理組合への支援を近年強化している。ただ「管理不全のマンションをどう把握するかが難しい」(住宅計画課)という。野澤教授は「空き家問題は早急の対策が必要」と話している。

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