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一蘭のラーメンが「常識の真逆」を行くのはなぜか

2014年09月03日 03時00分 更新

記者:高田仁氏


  • 高田仁氏(たかた・めぐみ) 1967年生まれ。九州大学工学部卒業後、大手メーカーに勤務。その後、九州大学大学院に進学し修士課程修了。コンサルタント会社を経て、1999年に(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI、現東大TLO)の経営に参画、2002年まで同社取締役副社長兼COO。03年より九州大学ビジネス・スクール助教授。同年10月から10年まで九州大学知的財産本部技術移転グループリーダーを兼務。05年から10年まで総長特別補佐。また、09年から翌年まで米国MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、その後、九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターの設立に参画し、10年より同センター複担。14年九州大学ビジネス・スクール教授。

高田仁氏(九州大学ビジネス・スクール教授)

 前回のこのコーナーでは、黄色い『博多通りもん』のヒットについて分析したので、今回は、赤い『一蘭のラーメン』について分析してみよう。

※前回コラム「博多通りもん」が追求する「ベター&ディファレント」

 一蘭の創業は1993年。既に地元のみならず関東エリアをはじめ全国50カ所に進出し、観光客にも人気のスポットとなっている。同社の売り上げは約100億円(2013年12月)、従業員は217名(2014年8月)と、右肩上がりの成長を続けている。

 13年には、初の海外展開として香港に出店し、24時間営業の店舗でオープン以来8日間行列が途絶えることがないということで、現地でも話題となっており、ギネスに登録申請中だ。

■一般的な店舗戦略との違い

 今や、博多の街を歩いていると「一蘭」の赤い店舗がしばしば目に飛び込んでくるようになった。しかし数年前まで、私自身は一蘭の出店方針や店舗内装、メニュー構成にいまひとつピンときていなかった。

 例えば博多駅店は、新JR博多駅ビルの人の流れからは離れた、向かいのビルの地下飲食街の突き当りという、およそ集客には不向きと思われる場所に店を構えている。また、福岡市西区の小戸店は片道1車線の県道沿いの立地だが、交通量からすると並行して走る国道202号線沿いのほうが圧倒的に有利なはずだ(ちなみに、2013年福岡市交通量調査では、同店舗のある小戸交差点付近では1日約6000台(片側)の交通量がある一方、国道202号線の福重交差点付近では、1日約13000台と車両数に倍の開きがある)。

 店舗内装も、一般的な飲食店の常識とは大きく異なる。「味集中カウンター」と称される間仕切りで、隣の客もスタッフの姿もちらりとしか目に入らない。入り口で食券を買い、電光表示板で空席を確認して席に座り、オーダー票に味の好みを書き入れて食券とともにのれんの向こうに差し出しラーメンを待つ、という特異なスタイルだ。ちなみに、このプロセスを支える入店センサや着席センサ、空席表示の仕組みは、特許が取得されている。

 さらにメニュー構成もラーメンを基本としたシンプルなもので、ラーメン屋に定番のチャーハンも餃子もない。そのため客は長居せず、ラーメンを味わったらスッと店を出る。一般的なラーメン店をイメージからすると、実に不思議な空間なのだ。

 この一蘭の特徴を、一般的なラーメン店と比較してみると下表のようになる。


【一蘭と一般的なラーメン店との特徴の比較】

一  蘭一般的なラーメン店
立 地・必ずしも人通りや交通量が多くない場所にも立地・立地(人通りや交通量)を重視
店舗内装・味集中カウンターのみ
・全体を見渡せない構造
・空席表示・誘導システム(特許取得)
・カウンターとテーブル席
・店主や客は全体を見渡せる
メニュー構成・ラーメンのみ・多様なサイドメニュー
・属人性を排した標準化、店舗間のバラツキなし・属人的で店主のこだわりを全面に
接客サービス・標準化、でしゃばらない・元気の良い店主や女将さん
客の滞在時間・総じて短い・グループ客などは長くなりがち


 

 これら一蘭の持つ特徴は、一般的なラーメン店の常識とは真逆にもみえる。その背景にはどのような戦略があるのだろうか。


■弱者が強者に勝つ『一寸法師戦略』

 同社の吉冨社長は、一蘭がラーメン業界で後発なこともあり、弱者が強者に勝つための『一寸法師戦略』を描き、実行している。それは、以下の3要素から構成される。

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