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元記者ピロシの醤油屋今日談

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さっ、寒い… 雪舞う中の洗いもの、試される仕事観 醤油屋今日談<3>

2018年02月09日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 雪が舞う中、製造中の味噌が入っていた容器を洗うピロシ

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 寒い。とにかく寒い。

 醤油や味噌を作る上で避けて通れないのが洗い物だ。ほぼ毎日、容器やヘラなどの使い終わった道具にホースで水をかけて、じゃあじゃあ洗う。大きな道具なら1時間以上かかることもあり、指先は常にかじかみ、固まってしまう。

 寒さはやり過ごすしかないが、つらいのは手荒れ。昨年秋ごろから荒れ始め、就寝前に保湿クリームを塗っても効果はいまひとつ。最近は指先がカサカサになり、スマホが指紋を認証してくれなくなった。

 乾燥した皮膚は弱い。ちょっとした接触でかすり傷や擦り傷ができる。商品に血が混ざると大変なので、そういう時はゴム手袋を着用するが、これがまた僕の手には小さすぎる。だから血行が悪くなり、また指先が冷えて動かなくなる。

 唯一の救いが、使用している地下水の水温が冬場でも18℃くらいに保たれていることだ。蛇口をひねってしばらくすると、ほのかに温かくなる。地下水が豊富な大分・日田の自然の恵みに感謝するほかない。

 ただし、安心できるのもつかの間、濡れた手は冬の風に当たると刺すような冷気に襲われる。記者時代のいわゆる「夜討ち」では真冬の夜の住宅街で何時間も取材対象者の帰りを待つことがあった。残念ながら寒い仕事には縁があるらしい。ただただ春が待ち遠しい。

 そんな過酷な職場環境の下でも、先輩たちはキビキビと作業をこなしている。慣れもあるだろうが、それ以上に、寒くても品質や作業効率の低下は許されない雰囲気が工場には張り詰めている。

 一回りも二回りも上の先輩たちが、白い息を吐きながら洗い物や草むしりをしている姿を見ると、仕事もろくにできないのに寒がっている自分が情けない。

 先日、還暦を過ぎたベテランのパートの女性に「こんなに寒いのによく体が動きますね」と何気なく話しかけた。返ってきた言葉にハッとさせられた。
 
 「そりゃ寒いけど、この年で働かせてもらって、お給料をもらえるのはありがたいと思ってますから」

 社会人になって14年。「働く」ことに情熱を注いできた自負はあるが、「働かせてもらう」という感覚をどれだけ持てていただろうか。記者だった時は、紙面を通じていろんな問題提起をする仕事柄、上から目線になりやすく、自分の立ち位置を見失いがちだった気がする。

 お客さまや会社のために働く謙虚な姿勢を忘れないようにね、と彼女の丸まった背中に優しく、でもしっかりと叱られた気がした。「働き方改革」という聞こえの良い言葉が流行する今だからこそ、余計にそう思った。

 真冬の寒さに学ぶことは多い。



※動画はおまけ※
寒い朝は、水道のホースから蛇のように氷がでてくる。これぞまさに「蛇口」!










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