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起業ブーム、経営者を待つ”落とし穴” ソーシャルビジネス専門会社トップの「哲学」とは

2019年02月05日 03時00分 更新

記者:石田剛


  • ボーダレス・アカデミー開講の狙いなどを語る田口一成社長

 事業を通して社会課題の解決を図る「ソーシャルビジネス」の注目企業、ボーダレス・ジャパン(福岡市)。零細農家が有機栽培したハーブの加工販売、多国籍の人が暮らすシェアハウス運営など20事業を展開する。成長を続ける同社が新たに始めたのが、ソーシャルビジネス専門の起業塾「ボーダレス・アカデミー」だ。そこで肝になる”哲学”は「何のために起業するのか」――。同社社長でアカデミーのメーン講師を務める田口一成さん(38)に開講の狙いを聞いた。

 ―アカデミーを開いた経緯は

 ボーダレス・ジャパンは社会起業家が集まるプラットフォームで、各事業はカンパニー制を敷いて運営している。社外からも毎週毎週、『何か事業をやりたい』と相談があるが、起業のステージに至っていない人が多く、もったいないと思っていた。

 社会を変えていくには、社会的な事業をする人を増やす必要がある。だが、いきなり起業家にはなれない。起業のステージに立つまで伴走する機能をつくろうと考えた。

 ―社会を変えるには、ボーダレス社自体が大きくなってカンパニーを増やすという考え方もある。アカデミーで起業家を増やすと競合相手を生む可能性もあるのではないか

 もともと、僕らは会社をつくろうとか、大きくしようとかいう発想はない。社会にとってどうあるべきかを考えながら変化し続けている。ボーダレスのグループだけで社会がよくなるかというとそれは違う。ボーダレスの枠に入らなくても社会課題の解決に挑戦できるお膳立てがしたかった。

 ―ボーダレス社の各カンパニーがビジネスプランを作り上げていく過程と、アカデミーの講義の違いは


 基本は一緒。ただ、コンセプトやビジネスプランをまとめるシートは少し丁寧に作り直している。それと、チームをつくって計画作りから相談し合う体制をとっていること。

 ビジネスプランを作るだけが起業家の条件ではない。プランはどこまでも仮説。事業を始めたら仮説通りになんていかない。うまくいかないところを組み立て直す力が必要。だから相談し合えるチームは重要。ボーダレスの各カンパニーも6〜7社ずつのグループで月に1回「経営会議」を開いて各社の課題を話し合っている。他社の経営も考えることで視野が広がり、経営者の力量も上がる。

 ―アカデミーの講義では、どんな社会課題を解決するか、という「ソーシャルコンセプト」の追究を徹底している点も印象的だ

 講義を始めたころは「もっとテクニカルな方法を教えないのか」という声もあった。しかし、それは本でもネットでも学べる。社会課題の解決に対してちゃんと「当たる」設計ができているか。その根幹がしっかりしていないとうまくいかない。結果的に儲けることができても、何のために経営しているのかがわからなければ方向を見失う。

 ―経営にゴールはない

 そう。ゴールのない会社経営で「何のために」が抜け落ちたまま重責だけを背負ってやるのは不幸でしかない。惰性で経営したら、何のために社長をしているのか分からなくなる。この話を経営者にすると、ほとんどの人の共感を呼ぶ。今、世の中は起業しろ、起業しろ、という流れだが「何のために」が抜けている気がする。

 ―修了後、すぐに起業を予定する受講生もいる。「社会起業家」が増える期待もある


 やはり、数の力は大きい。ティッピングポイント(物事が大きく変化する時点)に達するまでは数の原理を追わないといけないだろう。「起業する」と宣言した人に「どんな社会課題を解決するの」と質問が飛ぶのが当たり前になっていることが大切。そういう社会的空気をつくりたい。










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